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「壊す時代から、活かす時代へ」。AI時代にコザが守り抜く「挑戦の文化」—フォーシーズ株式会社代表 豊里健一郎氏インタビュー(後編)

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INTRODUCTION

沖縄市コザ。2016年に商店街の一角に生まれたスタートアップ支援施設は、10年で「コザスタートアップ商店街」と呼ばれる街になり、年に一度のカンファレンス「KOZAROCKS」には5,000人を超える人が集まるようになった。

前編では、その中心にいるフォーシーズ株式会社代表・豊里健一郎さんの10年を聞いた。軽い気持ちで帰郷し、地元出身という信用を外から来た人に貸し、求めないことでセレンディピティを生んできた「道先案内人」の10年である。

後編は、ここからだ。豊里さんは「コザはうまくいってるよね、と言ってもらえるけれど、全然まだまだ」と言う。雇用の外側で動くKOZAROCKSの運営、「壊して創る時代から、活かして創る時代へ」という今年のテーマ、そしてゆいまーるの街にあえて競争を持ち込むかもしれない、という次の挑戦。配ってきた本人が、いま何を賭けようとしているのか。11月20日に再開催されるKOZAROCKS 2026を前に、話は続く。

INTERVIEWEE
豊里健一郎氏

豊里健一郎氏

フォーシーズ株式会社代表取締役

沖縄県沖縄市出身。 留学、就職と15年間の海外経験を経て、2017年に現フォーシーズ株式会社を設立し、起業家支援を開始。創業支援、人材育成、コミュニティ運営等、沖縄のスタートアップ支援の中核拠点を運営し、沖縄とアジアを繋ぐスタートアップエコシステムに貢献。

目次を開く
  1. 雇用の外側で、KOZAROCKSは動いている
  2. 壊して創る時代から、活かして創る時代へ
  3. 残したいのは、挑戦という文化
  4. ゆいまーるの街に、ピークをつくる
  5. AI時代に、移設できない資産

雇用の外側で、KOZAROCKSは動いている

KOZAROCKSのスタッフ集合写真

―― KOZAROCKSには本当に多くの人が関わっています。どんな思想で運営しているのか伺いたいです。

もともとは成長産業のカンファレンス、挑戦者を集めるフェスとして始めて、音楽や街のカルチャーも活かそう、というものでした。いまも優先度が高いのは経済で、成長産業をつくるというテーマで人が集まり、そこから何かが起きればいいと考えていますし、実際、起きています。

最近は「文創開化」のようなテーマが、街そのものを表現するのにぴったりだと感じています。商店街のアーケードも維持が難しくなっているものが多く、そこにメッセージを投げることで、街や文化というテーマが強くなってきました。コザでなければできないコンテンツになってきたと思います。夜のライブハウスを昼に使えばカンファレンス会場が成り立つとか、手元にある資産をフルに活用しながら、「いまあるものは何か」を探る場になっています。

僕らの定義では、日常がコザスタートアップ商店街で、KOZAROCKSは非日常です。非日常の中で、どう挑戦者を増やすか。そういう位置づけで開催しています。

―― スタッフは基本的にボランティアですか。

近くに仙台育英の沖縄校があって、そこの生徒が50名規模で入ってくれています。大学生も、商店街の仲間も多いです。それだけでなく、プロが参加してくれているんです。街のラッパーが音響をやり、映像をやっている人が映像をつくってくれています。

最近すごいと思ったのは、直前に「朝、マルシェをやるぞ」と言ったら、打ち合わせなしにそれなりの規模のマルシェができてしまったことです。誰がどの配置について動けるか、みんなが分かっているからできることだと思います。

理想は、KOZAROCKSをもう少しコンパクトにして、この時間帯にここは誰が見ていて、誰がどこに立っているかが手に取るように分かる状態にすることです。「いま◯◯さんがあの場所にいるから、まちづくりの人はあっちへ」と言えるような。クオリティを100%にすることより、来た人が全力で何かできる状態をつくるほうがいいと思っています。このコンパクトさで、この場所でなければならないカンファレンスを磨き上げていこうと思っています。

―― それは結局、人を見る、ということですよね。その人だからできること、その人が一番活きる場所はどこか。いま人と組織の話題には必ずAIが出てきて、人を標準化し、再現可能性を高める方向に進んでいます。その中で、いまの話は、その人らしさという「ノイズ」のほうを価値として見ているように聞こえます。

組織づくりが得意かというと、あまり自覚はないんです。ただ、巻き込む力は強くて、多少雑でもやってしまいます。最近は自分の大義を強く語るようにしていて、語ると仲間が集まり、風が生まれる。「あなたの役割はこれだよね」と役割を振ることも多くなりました。そのあたりは、少し打算的にやっている部分もあります。

面白いのは、KOZAROCKSは僕の会社のイベントなのに、マーケティングもクラウドファンディングも業務委託の人たちが回していて、記事を書き、シェアし、もうKOZAROCKSの一員になっていることです。そのうちの一人が、産業をつくるというビジョンに共感して、「自分の会社に任せてくれないか」と言ってきたんです。

これまでは利益も損失も、今回の台風のようなことも含めて、自分たちのやりたいようにやらせてもらってきました。それを「自分だったらこうしたい」と言ってくる人が出てきた。普通、ないじゃないですか。

―― ないですよね。継いでいく、とも言えるし、役割が育っていく、とも言える。

営業もスポンサー集めも、まったく違う人間がやっています。自社ではないんです。自分ごととして捉えてくれる人がいることが、僕らの強みです。やらされ感ではなく、ここから生まれるインパクトの大きさが面白いのだと思います。

壊して創る時代から、活かして創る時代へ

KOZAROCKS 2026公式サイトより

―― KOZAROCKS 2026の言葉、「壊して創る時代から、活かして創る時代へ」。この「活かす」の背景には、何がありますか。

沖縄は島しょ地域で、観光に依存している島です。観光客は増え続けているけれど、いまある自然資本は確実に悪くなっています。気候変動が起き、海は壊れ、飛行機が飛び、渋滞が起き、新しいホテルが建つ。それが悪いというより、沖縄の観光やサービス産業が自然資本の上に成り立っていることを、僕らはつい忘れがちなんです。自然資本はあり続けると思っているけれど、努力なしに維持できるものはありません。

去年のテーマは「変わらないために変わりつづける」でした。商店街のアーケードは老朽化して落ちかけているけれど、その下にはいま賑わいがあります。それも努力なしには維持できない。だから変わらなければいけない、というのが去年でした。今年は、壊して創るから、活かして創るへ。いまあるものを長く使えばいいし、付加価値はつくれるはずで、そういう発想と工夫がなければダメになってしまうと思うんです。

―― ゼロイチではなく、1を派生させていく。

「文創開化」という言葉は、うちのメンバーが入れてくれました。150年前の文明開化で、西洋の素材や文化、産業革命の成果が一気に入ってきて産業が伸びました。同じように、いま第4次産業革命が起きています。AIがこれまで人がつくっていたものを一瞬でつくれるようになり、僕らに残されたのは何かといえば、文化と、人間による創造だと思うんです。文化と創意産業という意味で「文創」なんです。

古い建物や伝統や歴史を壊さずにリノベーションして、新しいデザインや商品や商業施設として蘇らせる。いま建てている「ROCX」というビルは、フルリノベーションで、沖縄で処理しきれず問題になっている物流パレットの木枠を、地域のおじいたちで構成された「シニアパレットばらし隊 ggg」に解体を手伝ってもらい、個室も額縁もその廃材でつくります。イケてるものは廃材でもつくれるし、産業にもなる。それを証明したいんです。

スタートアップは東京の逆張りだと言いながら、丸の内のど真ん中のビルでオープンイノベーションをやる。でもそういう場所でなくても、地域に何もなくても、文化さえあれば、意思ある人が集まれば何かは起きます。僕らはお金があるわけでもない商店街でやっているから、とことんこのボロさも活かして、アンチテーゼとして示していきたい。沖縄もいま地価が上がり、ホテルが建ち、新しいプロジェクトで産業をつくろうとしていますけれど。

―― 最新で最先端の場所をつくる、というのとは別の仕方がある、ということですね。

残したいのは、挑戦という文化

インタビューに答える豊里さん

―― 次の10年に向けて。沖縄以外の地域や大企業がコザに来て、また帰っていく。その循環の中で、何を手渡したいですか。

コザスタートアップ商店街には「百年続く挑戦を」というミッションがあって、挑戦者が挑戦するためのプラットフォームをつくっていると思っています。残したいのは、挑戦という文化です。

挑戦を批判すると減点主義になって、何も残りません。特に地域はそうで、「きっとうまくいかないよ」と言われる。でも挑戦するカルチャーを失ったら何も始まらない。それは怖いです。だから、それだけは残していこうという気持ちでいます。

―― それを育むエコシステムに欠かせないものは何か。ここまでを振り返っての結論があれば教えてください。

文化的資本だと思っています。その地域にある成功も失敗も共有して、挑戦する人を応援する環境、文化そのものです。起きた失敗を、いい捉え方で語ってもらえるようにしていく。それに尽きるかなと思います。

エコシステムには、リスクマネーを出す経済資本、大学など人を育てる人的資本、行政や政治がつくる促進環境があります。でも一番根っこにあるのは文化的資本です。シリコンバレーは常に挑戦者が集まる多様性の街じゃないですか。それがあることが、やはりすごいと思います。

ゆいまーるの街に、ピークをつくる

―― 来た人にその文化を取り込んでもらうために、何かしていることはありますか。コミュニティに招き入れる作法のような。

いますごく考えているのは、僕らはエントリーもイグジットも楽だった、ということです。ゆるっと来てもらい、沖縄のゆいまーるのような相互扶助で助け合いながら挑戦する。ここから出ていって挑戦するのも大歓迎。それがコザスタートアップ商店街で、いまもそうです。

けれど、これからはもう少し高さを出さないといけません。地域の尖った、本当に何かをつくらないと、成果として物足りない。だからエントリーを狭める可能性もあると思っています。「こういう人に来てほしい」「こういう人は、もっと大きなステージや違う環境へ行ってほしい」と、エントリーとイグジットに手を入れなければいけないのかもしれません。競争がある地域はそうじゃないですか。時代がその成長フェーズに来ていて、求めてもいる。僕はいま風をそう読んでいます。ゆるっとふわっとした時代から、一気に出力を上げなければいけないと思っています。

―― 基本は変えずに、山をつくっていく。

だからエントリーとイグジットは、本当に悩むんですよ。沖縄はずっと、ゆいまーるで支え合うコクリエーションの時代でした。でも人が成長するときは、コクリエーションよりコンペティションのほうが効くときもあります。隣と勝負した、隣の売り上げが立っている、悔しい、超えたい。健全な嫉妬が人を育てる。それは沖縄には似合わないというか、そういうカルチャーはありませんでした。だけど、スタートアップや挑戦者が一番伸びる源泉はそこなのかな、と最近思っている自分もいます。

みんな「コザのコミュニティは面白い」「うまくいっている」と言ってくれるのですが、全然まだまだで。何が足りなかったかと考えると、エントリーとイグジットに手を入れること、競争を働かせること、なのかなと思っています。

―― 場をつくり、一定の成果が出た。ここから何を生むのか、生んだものが他にどう影響していくのか、というフェーズに入った。「代表するプロダクトがない」という話を、そこにエネルギーをかけてつくりに行く、という選択もあるわけですね。

そうですね。

AI時代に、移設できない資産

スタートアップ商店街の前で

―― 最後に。AIによって何でもできるようになってきた時代に、人が実際に集まる場をつくることの価値や役割は、どう変わると思われますか。

漠然としか答えられないのですが、AI時代にはより重要になる。それは間違いないと思います。逆に、やっていてよかったと思うんです。

すごい資産じゃないですか。この商店街でずっとやってきて、街の人からも外の人からも、この場所が好きだとやっと言ってもらえている。これは移設できません。丸の内のビルではできないことです。新しいことを始めるにも、古い場所で何かをするにも、この場所に誰がどう関わり、ここで何をやったかという物語、ナラティブがコザにはどんどん積み重なっています。こういうものが、より求められていくと思います。

AIで新しいものはつくられます。でも、勝手なことを言うと、AIがつくった音楽や映像や写真やプレゼン資料は、魂が揺れないじゃないですか。

―― 分かります。本当に分かります。

いまは揺れるものもできているかもしれません。でも、そこが一番の違いだと思っていて。人が共感し、共鳴するものは、人がつくったものであってほしいと思っている自分がいます。いろんな挑戦のナラティブが見えるからこそ、この場所に価値が集まり、共感する資本、つまり人も時間もお金もかけてもらえるようになる。AI時代になって改めて、この場所を持っていてよかったと感じています。

―― この場に歴代関わってきた人たちの物語が接続されていて、もういない人の痕跡も振り返ればここにある。その上にいまがあり、また新しい人が来て、自分の物語を接続していく。そういう場だということですね。

そう思います。それが地域を超えて、誰かがその物語を持ち帰り、その地域に関係性が生まれ、新しい出会いや出来事が起きる。質問の答えになっているか分かりませんが。

―― 十分なっていると思います。僕が思っているのは、人の価値はその人が何をできるかではない、ということなんです。一面ではそうかもしれない。でも、その人がどう生きてきたのか、その人の物語は何なのか、そこに価値がある。だから多面的でいい。会社名や得意なことでラベルを貼られがちですが、考えていることや生き方に価値があるはずで、それが宙ぶらりんになると人は不安になり、「お金を稼がないと」となってしまう。でも接続できる場所があれば、「ここに属している」「ここにいていい」と思える。それがすごく育まれている場所に、外からは見えています。

そうですね。最近それに気づいて、人の物語や文脈、群像、活かして創る、というのは強いなと思っています。だって、そういうのを知ることができるから、コザに数回しか来たことがない人でも、外の人に少しドヤれるじゃないですか。「ここ、こうなんだぜ」って。そんな場所ってなかなかないですよね。

―― 本当にそうです。知れば知るほど、知っている自分も嬉しくなるし、また来たくなる。そういう循環が生まれている場所がコザだと思います。

スタートアップ商店街を背景に
EDITOR'S NOTE

編集後記

取材の前日、聞き手は東京でAIのカンファレンスに参加していた。コザの商店街で聞いた話は、そこで語られていたこととまるで違う場所に、大事なポイントを置いていた。

配る人は、配るだけの人ではなかった。軽い気持ちで帰郷し、勝負は海外だと思っていた人が、信用を配りながら10年かけて青写真を描く力を身につけ、いま、ゆいまーるの街に自らピークをつくろうとしている。その選択を街がどう受け止めるのかは、まだ誰にも分からない。分からないからこそ、これは挑戦なのだろう。

11月20日、KOZAROCKS 2026が再びコザで開かれる。

「通常は年に1回ですが、7月は不完全燃焼だったので、仲間たちがやりたいと言ってもう一回やります。沖縄のDX・IT展示会『ResorTech EXPO』と連携し、街一体となってカンファレンスを行います。街の挑戦者の非日常がKOZAROCKSです。この非日常も含めて、街の文化的な資本と、挑戦者が集まる街を見に来てもらえたら」

見に行く価値のある場所が、ここにある。

KOZAROCKS 2026:2026年11月20日(金)開催、11月19日(木)前夜祭

公式サイト:

KOZAROCKS 2026

KOZAROCKS 2026 | 文創開化

スタートアップ×万国津梁×音楽・ロック。沖縄・コザを舞台にしたカンファレンス&フェスティバル。2026年11月20日開催。

kozarocks2026.koza.rocks/

クラウドファンディング:

camp-fire.jp

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camp-fire.jp/projects/971131/view

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「日本とアジアの成長を牽引する新たな産業を生み出す」をミッションに、スタートアップ支援やファンドの運営を行なっています。FOURSEASは、日本とアジアをつなぐ架け橋となり、イノベーションの力で豊かな社会を目指します。

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