30代から意識したい《健康の数字》10選|健康診断でA判定でも油断できない理由
健康診断は毎年A判定。多少の無理や徹夜も「気合い」で乗り切れてしまう“体が強い人”ほど、30代のうちから知っておきたい数字があります。「人生100年時代」と言われる現代、いくら体が強くても、若い頃から無茶ばかりしていれば、60代、70代になった時に取り返しのつかない状態になってしまうことも。今回はそんな体が強い人ほど注意して欲しい、30代ビジネスパーソンが“今から”意識するべき《健康の数字》を10個、紹介します。さて、皆さんはいくつ知っているでしょうか?
「体が強い人」は何が強い?

体調不良とは無縁の生活、「深夜まで取引先とお酒を飲んで、翌朝一番に商談」なんてスケジュールでも通常運転。「仕事もプライベートも全力で楽しむ」を地でいくタフネス。こうしたいわゆる体が強い人というのは、そもそもいったい何が「強い」のでしょうか。遺伝子?それとも意志でしょうか?
確かに医学の世界では遺伝的な要素が、こうした「体の強さ」に影響することがわかっています。しかし一方で、後天的な要素も大きな影響をもたらしています。具体的には、
- 免疫システム
- 自律神経
- 腸内環境(フローラ)
の3つです。本稿ではこの3つを、体を支える「インフラ」と呼びます。これらが急激な環境変化や精神的ストレスに対してどれだけスムーズに適応し、元の健全な状態に復元できるかという総合的な調整力(レジリエンス)が高い人を、私たちは「あの人って体が強いよね」と表現しているのです。
「人生60年時代」と言われた1950年代や、「人生80年時代」と言われるようになった1980年以降であれば、こうした高レジリエンスな人は健康を意識せずに生きていても、亡くなる直前まで「ピンピン」と元気に過ごし、寝たきりにならずに「コロリ」と逝く、「ピンピンコロリ」の最期を迎えられたでしょう。
ところが人生100年時代ともなれば、何も気にせず最期の時まで健康で自分らしく過ごせる人は稀です。長く生きるほど、体のあちこちにガタが来て、食べたいものも思うように食べられない、行きたいところにも行けない、やりたいことにも挑戦できない。そんな状態になる確率は上がっていきます。
だからこそ、体が弱い人はもちろん、体の強い人でも、30代、40代といった働き盛りのうちから、自分の体の状態について客観的な数字に基づいて把握しておく必要があるのです。
体が資本だとしたら、これらの数字は株価のようなもの。人生という投資を成功させるためにも、肝となる指標には敏感にアンテナを張っておきましょう。
A判定でも油断は禁物。健康診断の数字4選

毎年、会社から義務付けられて受診する健康診断。その結果を見て「総合A判定(異常なし)」だからと安心し、書類を引き出しに仕舞い込んでいないでしょうか。
一般的な健康診断の基準値は、あくまで「今すぐ治療が必要な病気かどうか」を境界線とする最低ライン。「生涯の健康」を見据えるのなら、より視座を高く持つ必要があります。
※前半で扱う4つの数字は、3つのインフラのうち「免疫システム」と「自律神経」の状態を映す指標です。もう一つの柱である「腸内環境」は健診の数値に表れにくいため、後半の行動指標で扱います。
①:白血球数「3500〜6000個/μL」 【免疫の“兵力”】
白血球は免疫システムにおける実働部隊で、好中球、マクロファージ、T細胞など様々な専門分野を持つ細胞の総称です。したがって、血液検査の項目である白血球数は、自分の体が持つ免疫の“兵力”と言えます。
一般的な健診の基準値は「3000〜9000個/μL」。しかし健康維持を考えるのなら、「3500〜6000個/μL」をひとつの目安として意識しておきましょう。
というのも、米国で約2,800人を長期追跡した研究では、3,500〜6,000個/μLの人の死亡率が最も低く、それより少ない人も、6,000を超える人も死亡率が高くなったのです(Ruggieroら、2007年)。また、日本人約6,700人を9.6年追った調査では、9,000〜10,000の人は4,000〜4,900の人に比べ、総死亡リスクが1.61倍でした(NIPPON DATA90)。
白血球数は少なすぎてもダメですが、多すぎてもダメなのです。無駄な兵士を雇わず、適正規模で運用することが大切です。
②:CRP「0.1 mg/dL」以下 【炎症のアラートレベル】
CRP(C反応性たんぱく:C-Reactive Protein)とは、体の中で「炎症(トラブル)」が起きている時に肝臓で作られて血液中に増えるタンパク質。血中濃度は炎症のアラートレベルを示すものと言えます。
健康診断の一般的な基準値は「0.3 mg/dL以下」ですが、これは風邪や怪我など明らかな炎症がないかを見るためのラインです。将来の動脈硬化リスクや慢性的な疲労感をもたらす微小炎症(軽度の慢性炎症)の有無を意識するなら、0.1 mg/dL以下を基準にしましょう。
米国心臓協会と米国疾病対策センター(CDC)は2003年の共同声明で、高感度CRPが1.0 mg/L(=0.1 mg/dL)未満を心血管疾患の「低リスク」としています。日本人約2,600人を14年追った久山町研究でも、1.0 mg/Lを超える人は、最も低い人たちに比べて冠動脈疾患のリスクが高くなっていました(Arimaら、2008年)。
風邪でもないのにこの数値が0.1を超えて0.2台になっているようなら、過労や睡眠不足、不摂生のほか、
- 肥満(内臓脂肪の蓄積)
- 喫煙
- 歯周病
などが原因で、体のどこかに小さな炎症がくすぶっている可能性を示すアラートです。
③:血圧「上120 / 下80 mmHg」未満 【インフラパイプの負荷レベル】
血管は、全身に酸素と栄養を送り届ける体内のインフラパイプです。その圧力を示す血圧は、「自律神経」の状態を映す指標でもあります。
医療機関で「高血圧」と診断されるのは「上140 / 下90 mmHg以上」からですが、ここにも大きなギャップがあります。日本高血圧学会のガイドラインで、最も血管への負担が少なく脳や心臓のリスクが低いとされる「正常血圧」は、上が120未満、かつ下が80未満です。
もし「上130 / 下85」あたりに位置しているなら、同学会の分類では「高値血圧」に該当します。高血圧と診断される一歩手前ですが、同学会はこの段階から生活習慣を見直すことを重視しています。日々のプレッシャーによって交感神経が過剰に緊張し、パイプが常に収縮して負荷がかかっている状態と言えます。
④:ALT(GPT)「20 U/L」以下 【“代謝工場”の被害状況】
ALT(GPT)は主に肝臓の細胞に含まれる酵素です。しかし、脂肪肝やアルコール、ウイルス感染、過労、ストレスなどで肝臓の細胞がダメージを受けて破壊されると、細胞の壁が破れて中のALTが血液中に漏れ出してきます。これが血液検査で測定されるALT(GPT)の数値です。つまりは体の“代謝工場”である肝臓の被害状況を示す数字なのです。
一般的な基準値はおおむね「30〜50 U/L以下」。日本肝臓学会では31 U/L以上であれば医療機関の受診を勧めるように推奨しています。しかし、さらに低い基準値を設定する医師もいます。
栗原クリニック東京・日本橋院長の栗原毅氏は、ALT20〜30を「隠れ脂肪肝の疑い」としています。健康な献血者6,000人以上を調べたイタリアの研究でも、健康な人のALTの上限は男性30、女性19 U/Lと報告されました(Pratiら、2002年)。このように考えると、「20 U/L」以下という数字もあながち厳しすぎるとは言えないのです。
ALT(GPT)=お酒好きが気にする数値と考えている人もいるかもしれませんが、もしお酒をそれほど飲まないのにALTが20〜30付近まで上昇している場合、それは内臓脂肪の蓄積(脂肪肝の初期)の可能性があります。
肝臓は「沈黙の臓器」と呼ばれ、実際に機能不全を起こすまで自覚症状が出ません。そして自覚症状が表れた頃には、完全に機能を回復するのは至難の業です。そのため、20 U/L以下を自分の基準として維持していくことが、将来のエネルギー代謝を担保する鍵となります。
【POINT】知っておきたい、自律神経・免疫と代謝の関係

自律神経・免疫と代謝は1つの線でつながっています。自律神経の交感神経(アクセル)と副交感神経(ブレーキ)のバランスが崩れると、免疫細胞が正常に機能できなくなり、ウイルスや異常細胞への対策が疎かになります。
同時に心身のストレスが原因で交感神経が緊張し続けると血管が慢性的に収縮。免疫細胞が全身に行き渡りにくくなり、さらに免疫力が低下します。また、自律神経のアクセルが踏まれたままになると、代謝にも負担をかけます。代謝の負担が積み重なると、脂肪肝などを通じて肝臓の細胞が傷つき、ALTが上がりやすくなるのです。
だからこそ、健康診断では代謝の数値もしっかり把握しておく必要がある、というわけです。
行動が変われば体が変わる。健康的な行動の指標6選

4つの健康診断の数字を維持・改善するには、生活習慣の改善が不可欠。ただ「ていねいな暮らしをしましょう」と言われても、何をどうすればいいかわからないものです。だからこそ、ここでも客観的な数字に基づいて考えることが大切です。
過去の不摂生で数値が悪化していても、免疫・自律神経・腸内環境は後天的なアプローチによって何歳からでも改善が可能です。毎日忙しいビジネスパーソンでも管理・実践できる、6つの数字を知っておきましょう。
⑤:睡眠「7時間」 【自律神経のリセット】
多忙なビジネスパーソンが真っ先に削りがちなのが睡眠時間ですが、これはコンディション管理においては最悪の選択。米国で164人を対象に行われた実験では、睡眠が6時間未満の人は、7時間を超える人に比べて、風邪ウイルスを投与された際の発症リスクが4.2倍でした(Pratherら、2015年、Sleep誌)。
睡眠時、私たちの脳は血液から作られる脳脊髄液によって洗浄されています。認知症の原因物質とされているアミロイドβなどの老廃物を洗い流し、リンパ管や静脈を通じて肝臓や腎臓へと排出されているのです。
このシステムが機能するために欠かせないのが、深い睡眠です。マウスの実験では、睡眠中は脳の細胞と細胞の間の隙間が60%以上広がり、アミロイドβが覚醒時の約2倍の速さで排出されました(Xieら、2013年、Science誌)。
したがって、脳の健康はもちろん、単純な日中のパフォーマンスを考えても、最低7時間の睡眠枠は死守するべきなのです。
⑥:運動「30分」 【免疫細胞の循環促進】
運動による免疫向上を狙う場合、息が切れるようなハードな筋トレや長距離ランニングは必要ありません。むしろ激しすぎる運動は体に強いストレスを与え、一時的に免疫力を低下させます。
ターゲットにすべきは、うっすら汗をかく程度の軽い有酸素運動(早歩きのウォーキングなど)を1回30分行うことです。WHOは成人に、中強度の有酸素運動を週150〜300分(1回30分×週5日=150分)することを勧めています。また、米国で成人約1,000人を12週間追った研究でも、有酸素運動を週5日以上する人は、ほとんどしない人に比べて、風邪症状のある日数が43%少なくなりました(Niemanら、2011年)。
運動の刺激によって血管が適度に拡張し、免疫細胞にとっての基地である脾臓、免疫の検問所の役割を持つリンパ節に留まっていた免疫細胞が、血流に乗って全身を巡り始めます。通勤のひと駅分を歩く、昼休みに少し遠出をするだけでクリアできる数字です。
⑦:呼吸「4秒・8秒」 【ストレスのスピード・ケア】
デスクワークやミーティング中に「強いプレッシャー」や「イライラ」を感じた瞬間、体は一気に緊張状態(交感神経が優位)になり、無意識のうちに呼吸が浅く速くなっています。呼吸が浅いと息をしっかり吐き出せず、脳は「まだ危険な状態だ」と勘違いしてさらに自律神経を逆撫でし、動悸や焦りを増幅させるという悪循環に陥ってしまいます。
このループをその場で断ち切る強力なスイッチが「息を吐くこと」。自律神経には、息を吸うと交感神経(アクセル)を、息を吐くと副交感神経(ブレーキ)を刺激する性質があるからです。この時重要なのは、副交感神経を刺激するために吸う時間よりも長く吐くことです。
目安となるのが「4秒かけて鼻から吸い、8秒かけて口から細く長く吐き出す」呼吸法。順天堂大学医学部教授の小林弘幸氏は、3〜4秒で吸い、6〜8秒で吐く「1:2呼吸法」が、副交感神経の働きが高まるとして推奨しています。タスクの合間の数分間で実施できる、最もコストパフォーマンスの高いブレーキ機能です。
⑧:入浴「15分」 【入眠タイマー・オン】
「ゆっくり湯船に浸かっている余裕がない」「浴槽の掃除をするのが面倒」といった理由で、シャワーで済ませている人も多いかもしれません。しかし、自律神経や免疫のことを考えるとこれも御法度。40℃前後の湯船に15分浸かることで得られるメリットは、その時間や手間を省くよりも遥かに大きいものです。
| メリット | メカニズム |
|---|---|
| バツグンに寝付きがよくなる | お風呂で一時的に体内の温度(深部体温)を上げることで、お風呂上がりに体温が急降下します。脳はこの「体温が下がっていくタイミング」で強い眠気を感じる性質があるため寝付きがよくなります。 |
| 血管が広がり、体中のコリや疲れがとれる | ぬるめのお湯に温められることで、全身の血管がパッと広がり血流が改善します。 |
| 自律神経が整い、メンタル面でも「おやすみモード」に | 42℃以上の熱いお湯は体を「戦闘モード(交感神経)」にさせますが、40℃前後のぬるま湯は体を「リラックスモード(副交感神経)」へシフトさせます。 |
なお、15分にはきちんと根拠があります。というのも10分未満では深部体温が上がりきらず、筋肉のリラックスや睡眠への効果が落ちてしまいますし、長湯も逆効果。
温泉療法専門医の早坂信哉氏は、長時間の入浴は交感神経を刺激し、脱水も進むとして、40℃で10〜15分を勧めています。皮膚科医の野村有子氏も、適温でも長湯をすれば肌のうるおい成分が流れ出るとし、10〜15分程度を目安に挙げています。
⑨:食事「1週間30品目」 【細菌のダイバーシティ】
人間の腸の中では、多くの免疫細胞と腸内細菌が共生しています。腸内細菌がエサ(食物繊維やオリゴ糖)を食べると、代謝によって酪酸や酢酸といった短鎖脂肪酸を分泌します。この物質を免疫細胞が受け取ると、「よし、過剰な炎症を抑えよう」「免疫のバランスを整えよう」と動き出す、という仕組みです。
また腸内細菌は、免疫細胞のインストラクターでもあります。というのも免疫細胞は、腸内細菌の構造(表面の成分など)を認識し、「これは味方(善玉菌)」「これは注意すべき敵(病原菌)」と識別する学習をしているのです。
こうした免疫細胞にとっての理想的な環境を整えるために必要なのが、腸内細菌のダイバーシティ(多様性)。色々な分野のインストラクターの指導を受けるほど、様々な状況に対応できるようになる、というわけです。
そのための目安が「1週間で30品目以上の異なる植物性食品(野菜、果物、穀物、キノコ、海藻、ナッツ類など)を食べること」です。1万人以上が参加した米国の市民科学プロジェクト「American Gut Project」では、週に30種類を超える植物を食べる人は、10種類以下の人に比べて、腸内細菌の多様性が高いことがわかりました(McDonaldら、2018年、mSystems誌)。
腸内に住む多様な細菌は、それぞれ好むエサ(食物繊維やオリゴ糖のタイプ)が異なります。外食やコンビニ食であっても、「普段選ばない野菜が入った弁当を選ぶ」「サラダにトッピングを追加する」といった意識で品目数を増やすことが、腸内環境というインフラを支えることにつながるのです。
⑩:検証「2週間」 【菌・習慣の試用期間】
腸内細菌の集まり(腸内フローラ/腸内細菌叢)は「微生物の指紋」と呼ばれることがあるほど、一人ひとり異なります。そのため「話題の乳酸菌サプリ」や「腸活健康法」が自分の腸内フローラに合うとは限りません。したがって、新しい食品や習慣を導入した際は、菌・習慣の試用期間を設けて検証する必要があります。
目安となる期間は2週間。明治も、自分に合うヨーグルトを探す方法として、同じものを毎日2週間食べ続け、便や体調の変化を見ることを勧めています。
この期間でお通じの状況、寝起きの良さ、日中の疲労感や肌の調子にポジティブな変化が見られるかを評価します。変化がなければ、その菌や習慣は今の自分の体には必要のないものと判断し、中止するか切り替えを検討するのです。これにより、自分にとって意味のある腸活を見つけることができます。
まとめ:人生は「フルマラソン」から「ウルトラマラソン」へ
人生100年時代、私たちが一生を通じて走り続ける距離は、かつてないほど延びています。これまでの人生が42.195kmのフルマラソンだったとすれば、これからは100kmを超えるウルトラマラソンです。
走る距離がこれだけ延びれば、勝負を分けるのは序盤の瞬発力ではなく、最後まで走り切るためのペース配分とコンディション管理。20代、30代のうちに気合いと勢いだけで飛ばしてしまえば、40代、50代という中盤戦、60代〜80代以降の後半戦まで、無事に走り続けることはできません。
仕事に結婚、出産、子育て、事故や大病、災害。私たちの人生には、数々の踏ん張りどころがあります。それらを健康に、自分らしく切り抜けていくためには、体という資本を適切に扱う知識と技術が必要です。
まずは直近の健康診断の結果と4つの数字、最近の自分の生活習慣と6つの数字を見比べてみて、いくつクリアできているかをチェックしてみましょう。長い人生、何事も始めるのに遅いことはありません。
※本記事は一般的な情報であり、診断や治療に代わるものではありません。数値が気になる場合は医療機関にご相談ください。








