【イベントレポート】AIエージェント時代、人事は組織をどう再設計すべきか——「AIネイティブ人材」と3つの新しい正しさ

生成AIの登場から時間が経過し、テクノロジーの潮流は「対話型AI(チャットボット)」から、自律的に業務を遂行する「AIエージェント」へと移行しつつあります。

2025年12月9日に開催された「BtoB Growth EXPO for HR」のトークセッションでは、株式会社レクター代表取締役の広木大地氏と、株式会社テックビズのHRBIZ事業部の三宅真愛氏が登壇。「AIエージェント時代における組織再設計」をテーマに、人事が直面する課題と、これからの時代に求められる「新しい正しさ」について語られました。

本記事では、そのセッションの核心となるポイントをダイジェストでお届けします。

「チャットボット」と「AIエージェント」の決定的な違い

セッションの冒頭、広木氏はまず「AIエージェントとは何か」という定義から語り始めました。 現在、多くの人が利用しているChatGPTなどは、質問をして回答を得るという使い方が一般的です。対して、AIエージェントは「道具を渡し、自律的に業務を代行してもらう」パートナーであるといいます。

「何か頼んでも、結局自分で確認して修正しなきゃいけないなら生産性は上がりません。でも、30分、1時間とAIが代わりに働いてくれるなら、それは確実に生産性が上がります。 例えば僕のXアカウントは、1年間、AIが投稿するようなフローを組み立てています。AIエージェントを組み込んだ運用をおこなうことでフォロワー増加にもつながっています。このように『自律的に働いておいてもらう』のがAIエージェントです」

単なる自動化ツールではなく、共に働く「ビジネスパートナー」として捉えること。これが、これからの組織づくりの前提となります。

仕事はなくなるのか? 歴史が証明する「ジェボンズのパラドックス」

会場には多くの来場者が。

AIの進化に伴い、「人間の仕事がなくなるのではないか」という不安も聞かれます。しかし広木氏は、歴史的な観点から「雇用そのものが消失した現象は今まで起きていない」と指摘します。

ここで紹介されたのが「ジェボンズのパラドックス」です。 かつて蒸気機関の効率が改善した結果、石炭の消費量は減るどころか、需要が喚起されて逆に増大しました。ソフトウェアの世界も同様で、開発が簡単になるたびに適用領域が広がり、エンジニアの需要は増え続けています。

ただし、仕事はなくならずとも、「二極化」は進みます。

トップ層: AIをマネジメントし、1人で10人〜20人分の成果を出す人材
それ以外: AIに使われる側、あるいは代替可能な業務を行う人材

同じ給与で働くことが難しくなるこの時代において、人事は「均質な人材の大量採用」から「多様で突出した少数のチーム組成」へと意識を変える必要があるというわけです。

人事の最重要課題は「組織のリストラクチャリング」

日本企業において、IT投資をしても生産性が上がらない原因はどこにあるのでしょうか。広木氏は、その原因を「業務効率化で浮いたリソースを、次の価値創出へ移動させていないこと」にあると語ります。

「AIを使って仕事が早く終わったから、ゆっくりランチを食べよう、早めに帰ろう。これでは従業員は楽になっても、組織としての生産性は上がりません。 10人でやっていた業務を2人で回せるようにし、残りの8人を新しい価値創出(探索領域)へ向かわせる。この再編(リストラクチャリング)こそが、人事と経営が一丸となって取り組むべき課題です」

既存業務の人員を圧縮し、浮いたリソースを成長の原資へ回す。この「機動的な再配置」こそが、AI時代の人事が持つべき戦略機能です。

採用すべき「AIネイティブ人材」と3つの「新しい正しさ」

では、具体的にどのような人材を採用・育成すべきなのでしょうか。 広木氏は、AI時代には仕事の進め方における「新しい正しさ」が存在すると語ります。本セッションで語られた内容を紐解くと、これからの人材には以下の3つの要素が求められているといえます。

① できる化
これまで専門家(エンジニアやデザイナー)に頼んでいた作業を、AIのアシストを使って自分自身で完結させることを指します。

② 自働化
自分の分身となるAIエージェントを作り、自分が対応しなくても業務(メール返信や判断など)が回る仕組みを構築することです。

③ 自創化
知識創造までもAIエージェントが行い、自律的な改善サイクルが回る仕組みを作ること。業務を回すだけでなく、そこから新たな知見を生み出すプロセス自体をAIと共に構築する段階です。

おわりに:人事自身のOSアップデートを

セッションの最後、三宅氏は「人事の業務自体も再設計が求められている」と締めくくりました。

AIエージェントは敵ではなく、強力な味方です。評価、配置、採用、育成といった人事機能そのものを「AI前提」で再定義し、組織のOSをアップデートしていくこと。それが、これからの人事に求められる役割と言えるでしょう。

編集後記:人事こそが「余白」を作る勇気を

「効率化で浮いた時間を、そのまま楽な時間にするのではなく、次の価値創出へ向かわせる」。広木氏が指摘するように、このような考え方は多くの組織にとって耳の痛い、しかし本質的な指摘だったのではないでしょうか。

AIエージェント時代において、人事は単なる管理部門ではなく、事業成長の原資を生み出す「経営のエンジニア」のような役割を求められるはずです。これまでの慣習を見直し、痛みを伴う再配置を行ってでも未来への投資を行う。そんな「組織OSのアップデート」をリードできるのは、他でもない人事という役割だといえます。

AIエージェント時代に備えるために

イベントでも度々言及されている広木大地氏の新著『AIエージェント 人類と協働する機械』(リックテレコム)はこちらからご確認いただけます

本イベントに向けて読み込んできたという三宅氏

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執筆者
HUMAN CAPITAL + 編集部

「HUMAN CAPITAL +」の編集部です。 社会変化を見据えた経営・人材戦略へのヒントから、明日から実践できる人事向けノウハウまで、<これからの人的資本>の活用により、企業を成長に導く情報をお届けします。

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