これからの人的資本経営:フリーランスを含めた新時代の人材戦略とは

近年、企業の持続的な成長と競争力の源泉として、人的資本経営が注目を集めています。しかし、現状の人的資本開示義務は主に正社員を対象としており、働き方の多様化が進む現代社会の実態を十分に反映しているとは言えません。本記事では、フリーランスを含めた新しい人的資本経営の在り方と、それがもたらす価値について探ります。

HUMAN CAPITAL +

編集部

「HUMAN CAPITAL +」の編集部です。社会変化を見据えた経営・人材戦略へのヒントから、明日から実践できる人事向けノウハウまで、<これからの人的資本>の活用により、企業を成長に導く情報をお届けします。

1.人的資本経営の基礎理解と新たな課題

人的資本経営とは、従業員を単なるコストではなく、価値を生み出す重要な「資本」として捉え、戦略的に投資・育成していく経営手法です。日本でも2023年3月期から人的資本に関する開示が義務化され、その重要性が広く認識されつつあります。

しかし、働き方改革やデジタル化の進展により、フリーランスをはじめとする多様な働き方が広がっている現在、人的資本の概念もより広範囲に捉える必要性が高まっています。フリーランスを含む外部人材も、企業の価値創造に欠かせない人的資本の一部として認識し、統合的な人材戦略を立てることが求められているのです。

2.フリーランスを含む人的資本経営の新たな視点

フリーランスを人的資本として捉えることの意義は大きく、正社員とフリーランスの相互補完的な関係を構築することで、企業はより柔軟で強靭な組織を作り上げることができます。専門性の高いフリーランスを活用することで、企業は迅速に必要なスキルを獲得し、イノベーションを加速させることが可能となります。同時に、正社員は企業の中核的な業務や長期的な戦略立案に注力できるようになり、両者の強みを最大限に引き出すことができるのです。

3.先進企業に学ぶフリーランス活用の人的資本経営

先進的な企業では、すでにフリーランスを含めた人的資本経営の取り組みが始まっています。例えば、グローバルIT企業のGoogleは、「グーグラー」と呼ばれる正社員だけでなく、「ベンダー」と呼ばれるフリーランスやコントラクターも含めた包括的な人材戦略を展開しています。彼らは、プロジェクトベースでフリーランスの専門家を柔軟に活用しつつ、正社員との協働を通じて組織全体の創造性と生産性を高めています。

日本企業においても、IT業界を中心にフリーランス活用が進んでいます。ある大手メーカーでは、デジタルトランスフォーメーション(DX)推進にあたり、社内人材だけでなくフリーランスのIT専門家を積極的に登用し、迅速なプロジェクト遂行と社内人材の育成を同時に実現しています。

これらの事例から、フリーランス活用のポイントとして以下が挙げられます:

  • 明確な目標設定
  • 適切なコミュニケーション体制の構築
  • 正社員とフリーランスの協働を促進する企業文化の醸成

4.正社員とフリーランスを統合した人材戦略の立て方

正社員とフリーランスを統合した人材戦略を立てるには、まず企業のビジョンと具体的な人材ニーズを明確化する必要があります。長期的な戦略遂行に必要な正社員のコア人材と、特定のプロジェクトや専門領域で力を発揮するフリーランスの適切な配置を検討します。

また、正社員とフリーランスの双方に対するスキル開発やキャリア支援も重要です。フリーランスに対しても、プロジェクト参加を通じた学習機会の提供や、企業の価値観・文化の共有を行うことで、より高い貢献を引き出すことができます。

評価・報酬制度も再設計が必要です。成果主義的な要素を取り入れつつ、正社員の長期的なコミットメントとフリーランスの専門性を適切に評価し、報酬に反映させる仕組みづくりが求められます。このような包括的なアプローチにより、多様な人材が互いの強みを活かしながら、企業価値の向上に貢献できる環境が整います。

5.人的資本経営の未来:フリーランスを含めた開示と価値創造

人的資本経営の未来を見据えると、フリーランスを含めた開示のあり方も重要な課題となります。現在の開示義務は主に正社員を対象としていますが、将来的にはフリーランスの貢献も適切に評価・開示する仕組みが必要になるでしょう。例えば、プロジェクトへの参加率、スキル多様性指標、イノベーション貢献度などの新たな指標を開発し、企業の人的資本の全体像をステークホルダーに示すことが考えられます。

フリーランスを含む人的資本経営は、新たな企業価値を創出する可能性を秘めています。多様な働き方を尊重し、それぞれの強みを最大限に引き出すことで、イノベーションの加速、組織の柔軟性向上、そして持続可能な成長を実現できるのです。さらに、企業と個人が相互に成長し合える人材エコシステムの構築は、社会全体の価値向上にもつながります。

まとめ

人的資本経営の真価は、正社員とフリーランスを含むすべての人材が、自らの能力を最大限に発揮できる環境を整えることにあります。多様な人材を包括的に捉え、戦略的に活用することで、企業は変化の激しい現代社会において持続的な競争優位を築くことができるでしょう。フリーランスを含めた新時代の人材戦略は、企業の成長と個人の幸福を同時に実現する鍵となるのです。今こそ、企業は人的資本の概念を拡大し、フリーランスを含めた統合的な人材戦略を構築する時期に来ています。この新しいアプローチが、企業の持続的な成長と社会全体の発展につながることを期待しています。

SNSシェア
執筆者
HUMAN CAPITAL + 編集部

「HUMAN CAPITAL +」の編集部です。 社会変化を見据えた経営・人材戦略へのヒントから、明日から実践できる人事向けノウハウまで、<これからの人的資本>の活用により、企業を成長に導く情報をお届けします。