2026年に備える!7名の第一人者が示す、人的資本の本質

HUMAN CAPITAL+は2025年、7名の第一人者インタビューを通じて、激変する時代における組織と人材の本質を探求してきました。彼らが共通して語ったのは、AIと人口減少という大きな環境変化の中で、改めて問い直される「人間の価値」だといえます。

はじめに

2025年は、7名の第一人者インタビューを掲載しました。人事コンサルタント、組織開発の実践者、AIとデザインの最前線に立つ経営者たち。多様な立場から語られたのは、形骸化した概念への警鐘と、人間にしかできないことへの回帰だったといえるでしょう。

全体を貫くキーワードは「本質への問い直し」です。

AIという強力なツールの登場によって、逆説的に浮き彫りになった人間の本来的な価値。そして、流行に踊らされず、不変の原理原則に立ち返りながら、必要な変化を受け入れていく姿勢。それこそが、これからの組織と人材戦略の核心であることが見えてきました。

不易流行の人事哲学——坪谷邦生氏

人を生かして事をなす。原理原則に立ち返る

坪谷氏が示したのは、HRの本来の意味への回帰でした。「人への投資」として始まったHRは、いつしか形骸化し、本質を失っている。真の人事とは「人を生かして事をなす」こと。人が生き生きしていて、かつ成果が出ている状態を実現することです。

流行に踊らされず「不易流行」の精神で臨むこと。ジョブ型、人的資本開示、AIツール。新しい概念や技術を促進剤として活用しつつも、目的と手段を履き違えない。坪谷氏が体系化した「人事哲学」は、哲学的思考の重要性を示しています。

実践共同体が生み出す変革——吉田洋介氏

先人の知恵と現代の実践をつなぐ

吉田氏が主宰する「人事図書館」は、単なる学びの場ではなく、実践共同体として機能しています。先人たちが積み上げてきた組織運営の知恵は、十分に活用されないまま埋もれている。その知見を現代に橋渡しすることで、人事のプロが育つ循環を生み出しています。

歴史を知ることで情報の取捨選択ができるようになる。ジョブ型転換は過去に3回試みられ、いずれも浸透しなかった。この事実を知っていれば、今回の条件は何が違うのかという問いが立つ。知の再構築は、闇雲な施策の繰り返しを防ぎます。

従業員ファーストが成否を分ける——伊達洋駆氏

人的資本開示の最重要読者は従業員

伊達氏が指摘したのは、人的資本開示における逆説でした。開示を積極的に行っている企業ほど、従業員のエンゲージメントが低いという研究結果。実態とずれた「良いところだけの開示」が、内部の人間の信頼を失わせているというのです。

外部人材活用においても、補完型と変革型の違いを認識する必要があります。組織を本当に変えられるのは社内人材であり、外部人材は触媒に過ぎない。真の変革には、粘り強さと政治性、そして長期的関与が不可欠です。

デザインと情熱の力——ブランドン・ヒル氏

AIは模範解答を出すが、情熱を削ぐ

20年にわたり日本企業のグローバル展開を支援してきたブランドン氏が語ったのは、AIとデザイン思考の限界でした。AIは効率化を実現しますが、情熱を削ぐ危険性があります。模範解答を示されることで、行動する前に諦める人が続出しかねません。

デザインが民主化された今、誰もがデザインできるからこそ、本当に価値あるデザインが求められます。AIには永遠にできないこと——信頼性を作ることと、責任を取ること。この2つが、これからのデザイナーに最も必要な能力、ひいては人に必要な能力といえるでしょう。

弱さで愛されるリーダーシップ——但馬武氏

最愛ブランドを生む組織の条件

パタゴニアで19年間、事業推進の最前線にいた但馬氏が示したのは、「強さで頼られ、弱さで愛される」というリーダーシップ観でした。完璧なリーダーなど存在しない。弱さを認め、他者と対話し、本音で語り合える関係性こそが、組織を強くします。

最愛ブランド戦略とは、愛されることを戦略の中心に据える経営です。顧客から愛されるためには、そこで働くスタッフも同様に愛される必要がある。弱さを開示する勇気が、他者との協力関係と創発を生み出すのです。

相対速度で競争優位を築く——広木大地氏

消える生産性と、配られたカードで勝負する

広木氏が警鐘を鳴らすのは、「消える生産性」です。AIで効率化して早く帰れるようになった。しかし、それは生産性の向上ではありません。競合も同じツールを使える時代に重要なのは、絶対速度ではなく相対速度。どれだけ他社より前に進めているかという差が、競争優位を決めます。

日本のメンバーシップ雇用は、実はAI時代の強みです。企業内部で人材を循環させ、新しいことに挑戦させる。逆張りせず、配られたカードで勝負する。スマートフォン登場時と同じ変革期にある今、過去の教訓から学ぶべきです。

裸の自分で戦う時代——小澤健祐氏

リスキリングはいらない。視野を広げよ

AI活用の第一人者・小澤氏は「リスキリングはいらない」と断言します。形骸化したリスキリング、つまり目的なきスキル習得は無意味。AI時代に必要なのは、目的設定力、逆算する力、ストーリーテリング力。この3つは全ての人間に与えられた能力であり、「裸の自分」で差がつく時代になったと指摘します。

日本の総合職が再評価されるべきだと小澤氏は語ります。様々な部署を渡り歩き、企業全体を俯瞰するメタスキル。これこそがAI時代に輝く能力です。視野を広げ、スキルのポートフォリオを組む。10〜15年後には人間が働かない世界が来るかもしれない中で、今をどう生きるかを考えるきっかけになる内容です。

最後に

7名の第一人者が示した道筋は、一見すると多様でありながら、深いところで共鳴し合っています。

流行に踊らされず本質に立ち返ること。AIという強力なツールの登場によって、逆説的に浮き彫りになった人間の価値——哲学、対話、情熱、弱さ、視野の広さ。そして、変化を恐れず、しかし無謀な逆張りもせず、自社の強みを活かしながら前に進むこと。

形骸化した概念を問い直し、人間にしかできないことに集中する。外部の要請に振り回されず、自社の人・組織・事業の現実から出発する。この姿勢こそが、2026年以降の人的資本を考えるうえで、ますます重要になっていくでしょう。

HUMAN CAPITAL+は、これからも最前線で実践する方々の知見を届けることで、企業の成長と、そこで働く人々に貢献していきます。2026年も、どうぞご期待ください。

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執筆者
HUMAN CAPITAL + 編集部

「HUMAN CAPITAL +」の編集部です。 社会変化を見据えた経営・人材戦略へのヒントから、明日から実践できる人事向けノウハウまで、<これからの人的資本>の活用により、企業を成長に導く情報をお届けします。

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