【地方エンジニア活用】採用コストを最適化する3つの戦略とは?|都市部 vs 地方の比較

都市部でのエンジニア採用は、求人広告費や紹介料の高騰、早期離職による再採用などでコストが膨らみがち。リモートが普及した今、地方在住のエンジニアを採用の選択肢に入れることで、採用コストを戦略的に最適化できる可能性があります。地方エンジニア活用で「採用コスト最適化」を実現する方法を、人事目線で解説します。

改めて「採用コスト」に注目すべき理由

近年、首都圏や大都市圏ではエンジニアの採用競争が年々激しさを増しています。IT人材の採用に関する具体的な課題として、採用担当者の立場からは以下のようなものが挙げられます:

  • 母集団形成の難しさ
    求人票を出しても、応募数が集まらない。都市部の求職者は複数社からオファーを受けることが多く、知名度の低い中小企業やスタートアップは応募段階で候補から外されてしまうケースもある。
  • 大手企業への人材流出
    優秀な人材はネームバリューや待遇の良い大企業・急成長中スタートアップに流れやすい。新卒や20代の若手エンジニアほど「知名度」「研修制度」「成長」を求める傾向がある。
  • 採用後の定着・育成の難しさ
    入社後フォローアップや評価制度が整備されていないことによる早期離職。中堅・リーダー層が定着しない→適切な評価・育成ができない→早期離職→中堅層の業務量が増えてマネジメントに手が回らない・・・という負のループからなかなか抜け出せないパターンも多くみられる。

こうした都市部・首都圏での採用難を背景に、「地方の人材プールに目を向ける」という採用戦略が注目されています。

ただし重要なのは、単に採用先を変えることではなく、採用コスト全体をどう最適化するかという視点です。求人広告や紹介料といった目に見える費用だけでなく、オンボーディングや離職リスクなど“隠れたコスト”まで含めて考えなければ、本当の効率化にはつながりません。

この記事では、採用コストの整理、エンジニアの都市部採用と地方活用の比較、コストを最適化するための具体的な戦略について解説していきます。


採用コストの内訳

「採用コスト」というと、まず頭に浮かぶのは求人広告費や人材紹介料といった目に見える支出ではないでしょうか。しかし、実際の現場でかかっているのはそれだけではありません。

採用担当者や現場エンジニアの工数、オンボーディングにかかる教育・準備の負担、さらには離職によって再び発生する採用活動など、金額に換算すると大きな影響を与える“見えにくいコスト”が数多く存在します。

カテゴリ 主な内訳
人材獲得コスト 求人広告費、人材紹介料、採用イベント費、採用広報ツール制作
選考コスト 採用担当者・面接官の工数、候補者対応、オンライン面接ツール利用料
オンボーディングコスト 入社手続き、PCやアカウント準備、研修・教育、メンター工数
定着フォローコスト 1on1、キャリア支援、福利厚生、メンタルサポート
離職・機会損失コスト 再採用にかかる費用、開発停滞や売上機会の逸失、既存社員の負担増

採用コストを分解してみると、「広告や紹介料」といった目に見える費用だけでなく、社内メンバーの人件費や離職による負担など、“隠れたコスト”が大きな割合を占めていることが分かります。

そして都市部と地方では、この各カテゴリでかかりやすいコストの性質が異なります。次のセクションでは、その違いを具体的に比較していきます。


エンジニア採用:都市部と地方のコスト比較

エンジニア採用にかかるコストは、「都市部か地方か」という採用市場の違いによって構造が変わります。重要なのは「地方の方が安い/都市部の方が高い」と一言で片づけることではなく、どの段階でどんなコストが発生しやすいかを理解することです。

以下の表は、代表的な採用コストを都市部と地方で比較したものです。

(*あくまで傾向を整理したものであり、企業の状況や採用戦略によって変動する点は留意してください。)

コストカテゴリ 都市部採用 地方採用(リモート前提)
求人広告・人材紹介費
高い傾向
競争が激しく、広告単価や紹介フィーが高騰しやすい
比較的抑えやすい
競合が少なく、求人コストは都市部より低め。ただし母集団が小さい
オンボーディング・教育
高止まりしやすい
採用数は確保できても早期の再採用が発生すると教育コストが重なる
安定する可能性あり
採用人数は少ないが、制度が整えば教育コストの回収はしやすい
定着・リテンション
変動が大きい
他社オファーが豊富なため条件次第で流動しやすい
比較的安定
競合が少ない分、制度や働き方がマッチすれば長期稼働が期待できる
採用スピード(社内工数)
早い
母集団が大きいため候補者に出会える確率は高い
時間がかかる
母数が少なく、採用決定まで時間が延びやすい
フォロー・マネジメント
継続的に必要
流動性が高いため、キャリア支援やモチベ管理が重要
制度次第
リモート環境での孤立を防ぐために、仕組みの整備が不可欠

表で整理した通り、都市部と地方では「コストの発生ポイント」が異なります。都市部は候補者数が多い分、採用は進めやすい一方で、広告や紹介費が高く、内定辞退や短期離職によって教育コストや再投資が繰り返し発生するリスクもあります。

一方で、地方は母集団が小さいためフィットする候補者に出会う確率は小さくなりますが、求人費用は抑えやすく、制度やマネジメントが整えば定着に伴うコストも低く抑えることが可能です。

また、採用スピードの差やリモート人材特有のマネジメント負荷もコストに影響します。都市部ではスピーディに人材を獲得できても、早期離職が起これば結局コスト増につながりますし、地方人材のリモート活用ではコミュニケーションや評価制度の整備が不可欠で、それが不足すると追加的なフォローコストが発生します。


都市部に限定して募集をかけてもなかなか採用が決まらない、といった企業が地方に目を向けた途端、良い人材に出会えて採用がスムーズになった、といったケースもあります。

都市部と地方のどちらが「安い/高い」と決めるのではなく、自社が抱えている採用課題がどのコストに直結しているかを把握したうえで、地方活用を組み合わせることが全体のコスト最適化につながるのです。


地方エンジニア活用における、採用コストを最適化する3つの戦略

採用ブランディングと母集団形成

地方エンジニア活用を検討する企業は増えてきており、エンジニアひとりに対して複数の企業がアプローチすることも珍しくありません。母数の少ない地方エンジニアを採用するためには、候補者に「選ばれる会社」になることが重要です。そのためには、新卒・中途それぞれに合ったブランディング戦略が必要です。以下に戦略の一例をご紹介します。

新卒採用の場合

大学・専門学校との関係構築は早期母集団形成に直結します。インターンシップやキャリアセミナーを通じて、学生に「地域や社会の課題解決に取り組む企業」という認知を広げることが、採用ブランドを築く第一歩です。

また、テックビズが運営するHRBIZでは、新卒IT人材の採用支援に特化したプロ人事を紹介できます。採用広報から内定後フォローまで、新卒市場を知り尽くした外部人材を活用することで、限られたリソースでも効果的に母集団形成を行えます。

中途採用の場合

地方エンジニアの中途採用では、「都市部企業に勤めたいがフル出社は難しい」「地元で暮らしながら都市部案件に関わりたい」と考える層を狙うのが有効です。

  • 採用広報でリモートワーク前提を明示し、地方在住者でも応募できることを打ち出す
  • 地方エンジニアが求める「働きやすさ(柔軟勤務・子育て両立)」や「キャリア機会(都市部案件に関われる)」を訴求ポイントにする
  • 専門性をアピールできる技術ブログやオンラインイベントを実施し、候補者の信頼を獲得する

このように、中途採用では「リモート前提で即戦力として活躍できること」を候補者にイメージさせるブランディングが欠かせません。

マネジメントに投資する

採用単価を抑えても、早期離職が起これば再び採用コストが発生します。特に地方エンジニアはフルリモートで働くケースが多いため、入社後フォローと定着支援、制度整備は「コスト削減の投資」として捉えることが重要です。

  • 入社手続きやアカウント準備をスムーズに整備する
  • メンター制度や定期1on1を仕組み化する
  • 成果を適切に評価できる基準をつくる

こうした取り組みは短期的には工数や費用に見えるかもしれませんが、長期的には離職・再採用のコストを大きく下げます。

フルリモート環境でのマネジメント方法については、別記事「【地方エンジニア活用】フルリモート環境でのマネジメント実践法『3Vフレームワーク』で課題を“見える化”」で詳しく解説しています。ここでは「成果」「つながり」「キャリア」をどう“見える化”するかを紹介していますので、併せてご覧ください。

採用プロセスとコストを「見える化」する

どこにコストが集中しているのかを把握できなければ、最適化はできません。求人広告費なのか、面接工数なのか、オンボーディングなのか。採用コストをフェーズごとに分解し、スプレッドシートなどで可視化することが、改善の出発点になります。

例えば、次のようにコストカテゴリ別にまとめておくと、都市部と地方のどちらで解決できるのか判断しやすくなります。

  • 「求人広告費が膨らんでいる → 地方の候補者を含めてターゲットを広げる」
  • 「オンボーディング工数が逼迫 → リモート環境に合わせた仕組みを導入する」
  • 「離職による再採用コストが発生 → キャリア支援や評価制度を強化する」

このように“数字で見える化”して、感覚的な判断ではなく戦略的に採用コストを最適化していきましょう。

まとめ|地方エンジニア活用で広がる採用の選択肢

都市部だけに絞った採用活動では、求人広告や紹介料にコストが膨らむ一方、早期離職や再採用でさらに負担が積み上がるリスクもあります。

一方で、地方エンジニアをリモート前提で採用する選択肢を持つことで、採用市場の裾野が広がり、結果的にコスト構造を最適化できる余地が見えてきます。

ただし、地方活用は単なる「安さ」ではなく、戦略的な仕組みづくりが欠かせません。ここに投資をするかどうかで、採用活動全体の効率は大きく変わります。

私たちテックビズが運営するHRBIZでは、

  • 全国のエンジニア人材をターゲットにした採用支援
  • 採用広報や要件定義を担う「プロ人事フリーランス」の紹介
  • フルリモート前提での評価・定着施策のアドバイス

といった支援を通じて、多くの企業の「採用コスト最適化」をお手伝いしてきました。

もし「都市部での採用に限界を感じている」「地方人材も視野に入れたい」とお考えでしたら、ぜひ一度ご相談ください。貴社の状況に合わせた具体的な戦略をご提案いたします。

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執筆者
HUMAN CAPITAL + 編集部

「HUMAN CAPITAL +」の編集部です。 社会変化を見据えた経営・人材戦略へのヒントから、明日から実践できる人事向けノウハウまで、<これからの人的資本>の活用により、企業を成長に導く情報をお届けします。

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