マミートラックの背景には、個人の意識や努力だけでは解消できない、働き方や評価の前提に潜む構造的な歪みがあります。
配慮しているつもりの現場マネージャーや人事、本当はキャリアを断絶させたくない当事者、そして不公平感を抱える周囲のメンバー。それぞれの思いがすれ違うことで不健全な状態が固定化されてしまいます。
本記事では、人事歴20年のプロが、マミートラックを生み出す「わがまま論」の正体をひも解きながら、女性のキャリアと育児を両立させるために企業が取り組むべき働き方改革について整理します。
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『マミートラックは“わがまま”』と感じるのはなぜ?
マミートラックとは、育休中の女性が職場復帰した際、“配慮”と称して、責任や負担のない業務にまわされたり、キャリアアップの機会から外されたりする「ネガティブな意味合い」で使われることが多いワードです。
様々な状況から、立場によって『マミートラック わがまま』と検索する意図は異なります。まずは、その受け止め方の違いを見ていきましょう。
「時短で仕事をセーブしたい」という、周囲の支えを前提とする働き方への後ろめたさ
「育児に専念するために働き方を調整したい」という場合、現場マネージャーや同僚からの理解と協力が不可欠です。時短勤務や早退・欠勤で浮いてしまった業務は、周りにフォローしてもらう必要があります。
「自分が同僚の負担を増やしている」と肩身の狭い思いをすることもあり、過去には時短勤務後に自宅で業務を行う女性もいました。
「キャリアを諦めない働き方を望むのは私のわがまま?」というモヤモヤ
キャリアを中断せずに働き続けたい一方で、時短勤務や急な欠勤・早退によって周囲に負担をかけているのではないかという後ろめたさを抱くケースも少なくありません。
責任ある役割を担いたいという意欲と、周囲への配慮との間で葛藤が生じた結果、「両立を望むことは自分のわがままなのではないか」という自己評価につながることがあります。
こうした葛藤や迷いの情報を得る手段として「マミートラック わがまま」と検索するケースも考えられます。
業務のしわ寄せや評価の不公平感に不満を抱く周囲のメンバー
一緒に働くメンバーに、“配慮”という名の負担がのしかかるケースも無視できません。
急なフォローや残業の発生が日常化すると、「事情はわかるけれど、納得はできない」という感情の未消化が、「マミートラックはわがまま」という考えにつながります。

マミートラックを“わがまま”で片付けるのが正しいのか?
近年は男性の育休取得率も上昇し、2024年度の取得率は40.5%にまで上昇しました(2015年度の育休取得率は2.7%*)。それなのになぜ、女性だけの育児中の働き方が提起されるのでしょうか。
深堀りすると、関係者の気持ちの問題では片付けられない『働き方の歪な構造』が見えてきます。
※出典:『「令和6年度雇用均等基本調査」の結果概要』厚生労働省
「育児中=戦力外」というアンコンシャスバイアスが、制度設計ミスの責任を個人に押し付けている
マミートラックが生まれる背景の一因に、管理職や周囲の社員が無意識に抱く「育児中の女性は仕事に専念できないから、 責任ある仕事は任せにくい」という思い込みが存在していることが挙げられます。
これは悪意からくるものではありませんが、従来の働き方だけが“正解”と認識されていることによる、視野の狭い一方的な判断ではないでしょうか。
8時間のフルタイム勤務+残業、原則出社、即時対応・・・。
このような働き方が前提である職場では、育児中の女性がその枠に当てはまらないことで、「戦力外」と見なされやすくなります。結果として、本人の能力や意欲とは関係なく、重要な業務や成長機会から外されてしまうケースが起こります。

しかし、その前提そのものが、いまの社会の実態に本当に合っているのかを問い直す必要があります。
限られた時間の中で成果を出す優秀な人材は多くいます。従来の働き方に当てはまらないという理由だけで、「任せられない」とレッテルを貼ることは、果たして合理的でしょうか。
人事・経営層として本当に向き合うべきは、「育児中の女性がフルコミットできない」かどうかではなく、「成果の出し方を多様化できていない組織の在り方」です。
「時短勤務=キャリアを諦めた」と見なす、“時間で人を測る”組織は優秀な人材を逃す
そもそも「時短勤務」は育児中の女性だけの選択ではありません。
健康上の理由、介護、複業との両立、ワークライフバランスの実現など、様々な理由で「フルタイムで働かない」選択をする人がいます。
生き方が多様化したこの時代。「どれだけ長く働いたか」「8時間机に座っているのか」のような“時間”に偏った評価基準でいると、短い時間で成果を出せる優秀な人材が正当に評価されません。
「時短勤務者は戦力外」と見なすことが、個人の意思と能力の無視による機会損失であることがわかります。
不健全なマミートラックを防ぐ『働き方改革』|“わがまま”で片付けない視点とは?
①時短でも評価される制度設計へ
まず必要なのは、時間ではなく成果で評価する仕組みです。
育児中の女性に限らず、社員ひとりひとりの価値観を尊重し、満足度の高い働き方を提供することは、エンゲージメントの向上と離職率の低下をもたらすWin-Winな視点です。
そして、成果ベースの評価の定着によって、働き手を正社員一択から外部人材活用へ転換することもできます。
働き方が多様化しているからこそ、受け入れに柔軟性のある企業は“優秀な人材”の確保にも成功します。
②育児を「キャリア停滞の原因」にしない仕組みへ
育休前・復職後に、定期的にキャリア面談を行い、
などをすり合わせることが重要です。本人の希望と目標を正しく認識することで、マミートラックの固定化を防ぐことができます。
例えば良い対応事例として、復職申請が出てきたタイミングで上長と面談を設定し、復職後の働き方やキャリア思考について、当事者の意向を確認する機会をつくることができます。
お互い理解し合った状態で復職を迎え、業務アサインのミスマッチを起こさないようなコミュニケーションを取ることが大切です。
③マミートラック対策は企業価値を高め、次世代リーダーを育成する
不健全なマミートラックを防ぐ取り組みは、単なる「福利厚生」や「配慮」ではなく、人材を持続的に活かすための経営投資と捉えるべきものです。
マミートラックによって、意欲や能力のある人材が成長機会を失い、結果として離職に至れば、企業は採用・育成にかけたコストと知見を同時に失います。
一方で、育児中であってもキャリアアップの機会を提供できる企業では、エンゲージメントや定着率の向上につながります。
さらに重要なのは、こうした環境で育つ管理職層は、「時間ではなく成果で人を見る」「前提条件の異なるメンバーをマネジメントする」という力を身につける点です。
これは、変化の激しい時代において不可欠なマネジメントスキルであり、次世代リーダー育成の観点からも大きな価値があります。
④サポートする側の社員への説明と、多様な働き方の提示
支える側の不満を「理解不足」「思いやりの問題」にすり替えてはいけません。その体制をとっている理由や期間などを説明し、納得してもらう努力をしましょう。
加えて不可欠なのが、「支える側にも選択肢がある」状態をつくること。
たとえば、
今は支える側だとしても、 将来的には自分も柔軟な働き方を選べるという納得感。
マミートラック対策は、“誰もがライフステージに応じて働き方を選び直せる組織をつくること”につながります。
まとめ|「マミートラック わがまま」と検索されない組織であるために
「マミートラックはわがままなのか?」という問いの裏側には、現行の制度設計や評価軸の限界と、構造的な問題があります。
仕方がない、と片付けてしまえば、本来は活躍できたはずの人材を静かに失い続けることになります。
社員が「マミートラック わがまま」と検索しなくて済む職場とは、誰かが我慢して成り立つ組織ではなく、働き方の前提を問い直し、評価制度を再設計し続ける組織です。
人材を活かす構造を本気でつくれているのか?
本記事が、人事制度のあり方を見直すきっかけになれば幸いです。
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