【イベントレポート】人材不足時代を乗り越える:2025年問題を見据えた急成長企業の採用戦略とは

2025年、日本は「2025年問題」と呼ばれる大きな社会課題に直面します。5人に1人が75歳以上の後期高齢者となることで、労働人口の減少や社会保険料の上昇が予想され、企業にとって人材の確保と定着はこれまで以上に重要な経営課題となっています。こうした背景から、企業は新たな人材戦略を模索する必要に迫られています。

特に急成長企業では、採用が企業の成長を左右すると言っても過言ではありません。
では、実際にはどのような戦略が有効なのでしょうか。

そのヒントを探るべく、2025年1月30日(木)に2025年の採用戦略をテーマとした人事コミュニティーイベント「採用LT会 vol.1- 成長企業が語る!2025年の採用戦略トーク -」が開催されました。

各企業のプレゼンテーションから内容を抜粋し、これからの人材戦略の鍵となるポイントを紹介します。

2025年問題と新たな人材戦略の必要性

まず、このイベントのきっかけとなった2025年問題とは、採用戦略にどのような影響をもたらすのでしょうか。

2025年問題は、単に労働人口の減少にとどまらず、社会全体の構造変化をもたらす大きな課題です。特に企業にとっては、人材の確保と定着が経営の成否を左右する重要な要素となります。このような状況下で、フリーランス保護新法の施行や副業・兼業の解禁、人的資本情報の開示義務化など、企業の人材戦略に関わる制度や環境が大きく変化しています。

(2025年問題について、詳しく知りたい方はこちらの記事をご覧ください。)

株式会社Sales Markerの梅村 和希氏や株式会社マネーフォワード の川口 恵司氏も、「マーケットが年々厳しくなっている」と指摘しました。

経済産業省のデータによれば、IT人材に関して現状で約40万人超、3年後の2028年には50万人超の人手不足が予想されています。

このように人材確保が年々難しくなっていく中、各社はどのような取り組みを行っているのでしょうか。実例をあげてご紹介していきます。

株式会社HRBrainが掲げる「全社採用戦略」

株式会社HRBrainの石井 沙樹氏は2024年の振り返りとして、「全員採用」を掲げ社員全員が採用活動に参加する仕組みを構築したことで、元々設定していた数字の2倍という高い採用目標を達成することができたと語ります。

「現場のマネージャー陣から、事業成長のために人事だけではなく全員で採用をやろうというお声がけをいただきまして。やれることはやりきろうということで、2024年を乗り切りました。」

この取り組みが成功した秘訣は、前提として経営陣との距離の近さや高い目標に挑戦する社風や文化があったからこそだと石井氏は説明しました。

また2025年は更に加速させ、全社でのアトラクト勉強会など『当たり前の行動を仕組み化し、再現性を高める』ことを目指すとまとめました。

採用は人事部門だけの仕事ではなく、全社的な取り組みとして推進することで大きな効果を発揮することがわかります。

株式会社IVRyが取り組む「全社リファラル企画」

全社的な取り組みのひとつとして、リファラルに力を入れる企業もあります。

株式会社IVRyでは「全社リファラル企画」を実施し、強みを伸ばしていると福田 友樹氏は紹介しました。

IVRyが業界でも比較的高いリファラル採用率を持っている点に着目し、「”採用を自分事化する文化”を醸成する」ことがコツだと語りました。

2025年は更にリファラル文化を加速させるため、Recruiting Teamと各部門のマネージャー陣が定期のレポーティング・ランキング公開やソフト接点を創出するためのカジュアルな採用イベントの企画などの仕掛けづくりにも取り組んでいくとのことです。

このような『全社一体型の採用』の実現ができれば、短期的な数値目標の達成はもちろんですが、それ以上に重要な「持続可能な採用の仕組み」を確立することができるのではないでしょうか。

株式会社マネーフォワードが着目した従来の人材市場以外へのアプローチ

ここまで、どのように採用活動をすすめていくかという各社の工夫を見てきましたが、そもそもどの層にアプローチするのかというポイントもあります。

株式会社マネーフォワードの川口 恵司氏は、採用活動が「水が無い池を掘り続ける状態」になっていることが多いと問題提起しました。

「人材紹介もスカウトもやり切っているし、リファラルも社内の人への協力を仰ぎ続けて、巻き込みが難しくなっていて、どう改善していこうか悩ましい、という状況はどこの会社も一度は経験があることだと思います」

この状態の打破のために、株式会社マネーフォワードでは過去に接点がある有効母集団(カジュアル面談後辞退者、内定後辞退者、退職者)へのアプローチに挑戦していくと川口氏は言います。

更に2025年・2028年に向けて、ただ人材プールを運用するだけではなく形骸化しない仕組みづくりを目指していくとのことです。

新規の母集団形成だけではなく、過去の取り組みにも目を向け有効活用することができれば、可能性の幅が広がるのかもしれません。

株式会社Sales Markerが実践する「強い仲間」の増やし方

また、いくら人材不足といえども、闇雲に数を増やすのではなく優秀な人材を獲得できるかという視点は欠かせません。

株式会社Sales Markerでは、「採用の為の採用ではなく事業成長の為の採用」をテーマに、一人当たりのARR(年間経常利益)をKGIに設定。

「採用数を増やす目標を達成するというところであれば、ただ母集団を集めて、たくさん人を送り込むことでKGI達成しましたとなるわけですが、それは本質的ではありません。目標値をARRに設定することで、人事が事業部のメンバーと『事業を成長させるための人材とは、どういう人材か』という情報連携をするようになり、獲得する人材の質の向上に繋がった」と梅村氏は語りました。

人材不足のなかでも、より優秀な人材を獲得するための仕組みづくりを追求していく視点が、成長する企業であり続けるためには必要だということがわかります。

株式会社テックビズが目指す多様な雇用形態の活用

株式会社テックビズでは「雇用形態を問わない」ことが採用計画が上手く行っているポイントのひとつだと藤村 大輔氏は説明しました。

実は非成長企業のフリーランス活用率が14.2%に対し、成長企業のフリーランス活用率は30.5%と、成長企業ほどフリーランスなど多様な雇用形態をうまく活用しているというデータもあります。

※出典元:テックビズ『【調査】成長企業ほどフリーランスを積極活用!活用率が非成長企業の2倍、7割が正社員と同等の裁量を付与

藤村氏は、雇用形態を限定して母集団形成をする気持ちはわかると語りつつも、今の労働市場を鑑みたときに「事業を成長させる」という原点主義に立ち返って、多様な雇用形態を活用していくという選択肢を示しました。

働き方の多様化が進むなか、既存のイメージにとらわれず「企業に必要な人材かどうか」という観点で選択していく必要があるのかもしれません。

テクノロジーと向き合う株式会社LayerX

採用活動においても、テクノロジーの活用が進んでいます。

株式会社LayerXの上原 悟氏は、「テクノロジー活用 ✕ 凡事徹底」が2025年の採用戦略の鍵になると語りました。


AI活用について、「(今後は)求職者さんもAI慣れが発生してくると思います。このスカウトAI使ってそうだな、と読み手側にもわかってしまう。そうなると、マイナスのイメージを与える可能性も出てくる」とし、AIを活用したスカウト文章や面接議事録の自動作成により効率化を図りつつも、候補者の「AI慣れ」にも注意を払う必要があると語りました。

さらに、「私は、面接官、つまり求職者さんと対峙する方のアトラクト力を改めてしっかり磨いていこうと思ってます。AIを活用することに振り回されるのではなくて、改めて目の前の求職者さんに真剣に向き合える会社さんがこれから勝っていく」とし、採用の本質を見失わないことが大切であることを伝えていました。交流会の様子

トーク終了後には、参加者同士の交流会が行われました。各社の人事担当者が集まり、今後の採用戦略について意見交換を行いました。各社の取り組みやライトニングトークで紹介された手法についての議論が活発に行われ、今後の人材戦略のヒントとなる多くの意見が交わされました。

まとめ

今回のイベントを通じて、急成長企業がどのように人材確保に取り組んでいるかを学ぶことができました。

まず、採用を人事だけの問題ではなく「事業成長のための課題」だと全社員が認識できているかどうか、が第一ステップだと言えるのではないでしょうか。

その上で、過去の有効母集団であったり、雇用形態であったり、従来の採用活動に留まらない視点を持つことで、幅を広げることができることがわかりました。

また、目標設定の方法やテクノロジーの活用方法にも着目し、人材や採用活動の質の向上に取り組む必要があることにも気付かされました。

ご紹介しきれなかった取り組みもありますが、2025年問題から派生する人材不足に対して、少しでもヒントを得ていただけると嬉しいです。

今後も、テックビズでは人事担当者向けのイベントを定期的に開催予定です。

今回の交流会でも、「なかなか他社の採用戦略を聞ける機会が無いので、非常に勉強になった」という声を多くいただきました。

ご興味ある方は、ぜひ次回以降のイベントにお越しください。

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執筆者
HUMAN CAPITAL + 編集部

「HUMAN CAPITAL +」の編集部です。 社会変化を見据えた経営・人材戦略へのヒントから、明日から実践できる人事向けノウハウまで、<これからの人的資本>の活用により、企業を成長に導く情報をお届けします。

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