万博跡地が示す“次につなげる設計”Beyond-EXPOに学ぶレガシー戦略「大阪・関西万博」特集②

万博跡地が示す“次につなげる設計”Beyond-EXPOに学ぶレガシー戦略「大阪・関西万博」特集②

2025年10月、閉幕を迎える大阪・関西万博。多彩なパビリオンや展示が話題を集めるなか、注目されているのが“その後”の大阪です。大阪府と大阪市は、万博跡地のある夢洲(ゆめしま)区域を中心に、閉幕後の成長戦略をまとめた「Beyond EXPO 2025」構想を発表しました。

この構想では、万博で得た健康・医療、環境、AIなどの知見を地域経済に還元し、府内総生産を40年代に約80兆円規模へ拡大させることを目指しています。単なる跡地開発ではなく、万博を起点に“未来を更新し続ける都市”をつくるためのマスタープランです。

この「終わったあとをどう活かすか」という発想は、企業の組織づくりにも通じます。今回は、大阪府が描くBeyond EXPO 2025構想を手がかりに、“終わらせない設計”から学ぶレガシー戦略を考えます。

万博跡地が示す:Beyond-EXPOとレガシー戦略

万博跡地が示す:Beyond-EXPOとレガシー戦略

大阪・関西万博の閉幕を前に、大阪府が発表したBeyond EXPO 2025」構想。万博跡地である夢洲(ゆめしま)区域を、閉幕後も国際的なイノベーション拠点として発展させるための成長戦略です。

大阪府と大阪市は、マスタープランの中で「健康・医療」「環境」「モビリティ」「AI」などの分野を重点領域に設定し、万博で得た知見や技術を地域経済に還元していく方針を示しました。 目標は、府内の名目GDPを現在の約50兆円から、2040年代には約80兆円へと拡大させること。 いわば、万博を“ゴール”ではなく“始まり”にするための青写真です。

「Beyond EXPO 2025 ~万博後の大阪の未来に向けて~」2025.9.12 第17回副首都推進本部(大阪府市)会議 資料2

※出典:「Beyond EXPO 2025 ~万博後の大阪の未来に向けて~」2025.9.12 第17回副首都推進本部(大阪府市)会議 資料2

象徴的なのが、会場中央に建設された「大屋根リング」。このパビリオンは、万博閉幕後の再利用を前提に設計されており、すでに企業や自治体から再利用提案を募る動きも始まっています。 「どう使い切るか」ではなく、「どう残すか」を最初から考えているのです。

こうした“事前設計”があるからこそ、跡地開発もスムーズに進む。構造・動線・素材の段階から再利用を想定しておけば、解体コストを抑え、持続的に価値を生み出せます。 つまり、事前設計は“後片づけを効率化する手段”ではなく、“終わり方そのものを価値に変える戦略”なのです。

この発想は、企業の組織づくりにも通じます。 研修やプロジェクト、採用など、どんな取り組みでも「終わったあとに何が残るか」を設計しておくことで、活動が一過性ではなく、次につながる資産になります。 大阪府のBeyond EXPO 2025構想からは、様々な取り組みを打ち上げ花火で終わらせず、次に繋げるための戦略が読み取れるでしょう。

万博跡地が示す:企業におけるレガシー戦略と重要性

万博跡地が示す:企業におけるレガシー戦略と重要性

大阪万博が開催前から「終わったあと」を見据えていたように、企業にとっても“始める前に終わりを設計すること”は大きな意味があります。多くの研修やプロジェクトは、スタート時に「成功の定義」はあっても、「終わったあとに何が残るか」は曖昧なまま進みがち。ここを最初に描いておくかどうかで、取り組みの価値はまるで変わります。

まずは目的の解像度が上がる。 たとえば研修なら「満足度を高める」ではなく、「半年後に学びを共有できる状態をつくる」と設定する。ゴールを“継続する価値”として定義すれば、設計も行動も変わります。

次に、成果を継続的に再現できるようになる。プロジェクトの途中から「記録を残そう」としても、多くは後回しになってしまいます。しかし、立ち上げ時点で“成果と同時に残る仕組み”を作っておけば、仕事を進めながら自然とナレッジが蓄積されていく。テンプレートや共有フォーマットを最初に設計しておくのはそのためです。

そして、継承コストを下げられるのも大きな利点です。 人が異動したり退職したりしても、プロジェクトの記録や判断の意図がきちんと残っていれば、次のチームはゼロから学び直す必要がありません。つまり、“レガシーは後から頑張って残すものではなく、進めながら自然に残るもの”に変わるのです。

もう一つ大事なのは、「残す行為を評価に変える」こと。 知識を共有したり、仕組みを整えたりする行為は、直接成果に繋がらないため敬遠されがちです。残す行為が評価される仕組を設計しておくことで、自然と継続される文化が作り出されるでしょう。

要するに、レガシー戦略とは“終わり方をきれいにするための工夫”ではなく、“続ける前提で始めるための戦略”です。 Beyond-EXPOが会期中から「次につなぐ仕組み」を仕込んでいたように、企業も研修やプロジェクトの段階で、「この経験をどう次に活かすか」を描いておくことが、資産を生む第一歩になるでしょう。

万博跡地が示す:フリーランス活用に生かすレガシー戦略

万博跡地が示す:フリーランス活用に生かすレガシー戦略

レガシー戦略の考え方は、フリーランス活用にも活かせます。 企業がフリーランスを迎えるとき、つい「即戦力を増やす」「短期的に成果を出す」ことを目的にしがちです。しかし、いま求められているのは長期的に“育て合う関係”。どんな関わり方をすれば、フリーランスが社内に新しい価値をもたらし、次の挑戦へつながっていくのか――。 それを事前に設計することが、レガシー戦略の発想です。

たとえば、依頼の目的を「目の前の課題を解決する」だけでなく、「中長期的に一緒に仕組みを育てていく」と定義する。 プロジェクトが終わったあとも、フリーランスがアップデートや改善提案に関われる状態をつくっておけば、成果は継続的に磨かれます。 “納品して終わり”ではなく、“次にどう活かすかを一緒に考える関係性”が、企業にとっての資産となるでしょう。

また、フリーランスの知見は、一度取り入れて終わりではありません。複数のプロジェクトにまたがって関わってもらうことで、企業の文化や方向性を深く理解し、より的確な提案ができるようになります。 つまり、フリーランスを継続的なパートナーとして育てることこそが、企業の知識資産を成長させる戦略なのです。

レガシー戦略の本質は、「成果を積み上げる」よりも、「成果がつながり続ける状態を設計する」こと。 フリーランス活用も同じです。 採用前に「この関係をどう続けていくか」「次にどんな価値を生み出せるか」を描いておけば、プロジェクト単位の契約でも長期的な成果が得られます。

一度きりの成果ではなく、関係そのものを資産に変える。 それが、これからのフリーランス活用におけるレガシー戦略のあり方ではないでしょうか。

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編集後記】失敗こそ、いちばんの資産かもしれない

資産と聞くと有形資産を思い浮かべがちだが、無形資産も立派な資産。そして、企業がもっと注目すべき資産を考えた時、それは「失敗経験」ではなかろうかと思いました。

以前、取材である教授がこんなことを話していました。 「日本では“心理的安全性”という言葉を、感じよく振る舞うことだと勘違いしている人が多い。しかし、その本質は“失敗にある”」と。 つまり、失敗を隠さず共有できる環境こそが、組織を強くするというわけです。

確かに、失敗のたびに怒られたり、罰を受けるような環境では、誰も挑戦しようとは思いません。 失敗を“禁止事項”ではなく“共有資産”として扱うことができれば、チャレンジする人も、学びが生まれる組織も増えていくはずです。

ちなみに、海外のある起業家は、毎晩子どもに「今日はどんな失敗をしたんだい?」と尋ねる習慣を持っていたそうです。 子どもが「失敗したよ」と答えると、心から喜び、褒めたのだとか。当然、その子は失敗よりもチャレンジする習慣が身に付き、自身も起業して成功したそうです。

この話を聞いて、私も家族で“失敗をシェアする習慣”を始めてみました。うまくいかなかったことを笑って話せる時間も、実は前向きなレガシー戦略なのかもしれません。

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鈴木光平
執筆者
鈴木光平

10年にわたって、フリーライターとして活動。テックビズのライターとしても活動中。主にスタートアップ界隈を中心に起業家や投資家などを取材、記事の執筆などを行ってきました。貴重な話を聞いてきた経験から、少しでも役に立つ情報をお届けします。

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