ハプティクスはスマホの“バイブレーションの進化版”ではない──PixelやiPhoneが示す新しいUX

ハプティクスはスマホの“バイブレーションの進化版”ではない──PixelやiPhoneが示す新しいUX

2025年も12月を迎えたため、BizTRENDでは“今年話題になったビジネスワード”にフォーカスしていきます。今回取り上げるのは「ハプティクス技術」。

いま、ハプティクス技術があらためて注目されています。振動でスマホが知らせてくれる仕組み自体は昔からありましたが、2024〜2025年にかけて、その役割が大きく変わり始めているためです。

近年、Androidスマホなどに標準装備されているハプティクス技術。“バイブレーション(振動通知)”などを含めた触覚技術が、にわかに注目を集めています。その背景には触覚そのものを情報として活用する動きがあるからです。

視覚と音が飽和しつつある中、振動や触覚で体に直接メッセージを届けるUXが、次のインターフェースになるのではないか──。そんな大きな転換点を迎える今、企業はどんな未来を見据えるべきなのでしょうか。

ハプティクスは「nextスマホ」の入口になるか?

ハプティクスは「nextスマホ」の入口になるか?

私たちの“情報の受け取り方”は、いま大きな転換点を迎えています。世界のスマホ平均利用時間は1日4.8時間に達し(DataReportal 2025)、日本でも多くの人が毎日数百回スマホ画面を確認すると言われています。

その一方で、通知に疲れを感じる人は6割を超えると言われています。視覚や音だけに頼るUXは、すでに生活の実態とズレ始めているのです。

この状況で、ハプティクスの価値が一気に変わりました。かつては「通知のおまけ」のように扱われていた振動が、いまや“情報を判断する最初のチャンネル”になりつつあります。スマートウォッチ市場はCAGR(年平均成長率)は12.4%であると予測されており、スマートリング市場も拡大傾向にあります。これらのデバイスでは通知の大半が触覚で受け取られ、視覚より先に“体が情報を理解する”体験が広がっていくでしょう。

もはやハプティクスは「振動の技術」ではありません。長く続いた“画面中心のUX”が揺らぎ、新しいインターフェースが必要になった時代の入口に立っているのです。

今、注目されているのは技術ではなく、触覚が生活の中心に戻りつつあるという大きな変化そのもの。ハプティクスはまさに、その変化を象徴する最前線にあります。

ハプティクスが新しいUXの選択肢として常識を覆せるか?

ハプティクスが新しいUXの選択肢として常識を覆せるか?

ハプティクスの台頭により、企業が本気で向き合うべきなのはなんでしょうか。それは個別技術の選択というミクロの判断ではない気がします。いま起きているのは、“情報は画面で受け取るもの”という前提そのものが崩れ始めているという、小さなイノベーション。

20年以上続いたスマホ中心のUXは、「見る」「タップする」ことを前提にしてきました。しかし2024〜2025年にかけて、スマートウォッチやスマートリングの普及、音声アシスタントの精度向上、家電や車との連携の拡大によって、ユーザーはスマホの画面以外で情報を受け取る選択肢を手にし始めました。 触覚(ハプティクス)が注目されているのも、この“選択肢が増えた社会”の象徴にすぎません。

これまでスマホを通してサービスを提供してきた企業は、「画面を見なくても価値を提供できるだろうか?」と考えてもいいのではないでしょうか。 ユーザーが行動できる情報の届け方は、触覚、音声、さらには匂いや温度など、どんどん多様化していきます。画面操作を前提にしたUXは、「使いにくい」と評されるようになるかもしれません。

ハプティクスは、この“脱・画面中心”の変化を加速する技術です。そんないま、企業に求められるのは「スマホ登場以降に固まったUXの常識を、一度フラットに戻す勇気」 ではないでしょうか。

外部人材が生む“揺らぎ”が当たり前を覆す

外部人材が生む“揺らぎ”が当たり前を覆す

新しいUXをつくろうとするとき、企業が最初にぶつかる壁は「技術がないこと」ではありません。もっと手強いのは、自分たちが長いあいだ信じてきた前提を疑えないことです。

携帯電話からスマホへと進化する中で、私たちは20年以上「画面を見て操作するUX」を当たり前として積み重ねてきました。この“当たり前”は便利でしたが、そのぶん企業の発想を静かに固定化してしまいました。

ハプティクスのような新しい可能性が現れても、「画面を前提にしない設計」を自然に思いつくのは難しいもの。だからこそ重要になるのが、外部人材との協働です。

社外のプロフェッショナルは、企業の歴史も文脈も知らないからこそ、素直に問いを投げかけてくれるでしょう。「本当に視覚で伝えるのが最適なのか」。こうした問いは、ときに技術提案よりも大きく組織の思考を揺さぶります。外部の視点は、企業が気づかない“暗黙の前提”をあぶり出してくれるのです。

外部人材がもたらす価値は、単なるスキルや技術の埋め合わせだけではなく、前提に揺らぎをつくり、企業が選べるUXの幅を広げてくれることにあります。プロトタイプを短期間で形にしながら、「触覚で届ける方法」「音で知らせる方法」など、次の時代に必要な選択肢を実際の体験として示してくれるかもしれません。すると社内の思考も自然と広がり、UXの未来を描く力が高まっていきます。

いま企業に求められているのは、正解を持った人ではなく、“前提を揺らす存在を、チームに一度迎える勇気”です。ハプティクスのような新領域への挑戦を、単なる技術導入で終わらせず、組織の未来を広げる機会へと変えてくれるのが、外部のプロフェッショナルなのかもしれません。

テックビズで新しいUXへの第一歩を

新しいUXを形にしようとするとき、企業に必要なのは“すべてを自前で抱えること”ではありません。大切なのは、社内では見えづらい前提を揺らし、未来の選択肢を広げてくれる外部の力を適切なタイミングで取り入れることです。

テックビズは、そんな“外部の知見を柔軟に取り入れたい企業”にとって頼もしいパートナーです。継続稼働率97%という高い実績を持ち、企業が抱える課題に合わせて、最短即日で最適なフリーランス人材を紹介してくれます。UXの新しい方向性を試したいとき、プロトタイプを素早く形にしたいとき、あるいは社内の思考に新しい風を入れたいとき──必要な役割を必要な分だけ補ってくれるのがテックビズです。

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編集後記:万博でみた「孤独を癒す技術」の萌芽

2025年の大阪・関西万博に足を運んだ方は、NTTパビリオンで体験展示された「ふれあう伝話」を見たかもしれません。離れた場所にいる人とハイタッチすると、その触れた振動がリアルに相手に伝わる――そんなIOWN技術を使った展示です。

正直なところ、初めて見た時の私は「だから何が変わるのだろう?」という印象しかありませんでした。しかし取材を通じて、この技術がどんな場面で力を発揮するのかを直接聞くことができました。

特に心に残っているのが、産後の赤ちゃんの鼓動を振動として母親に伝えるプログラムです。母子の健康状態によっては、出産直後に赤ちゃんと触れ合えないケースもあります。そんな時、たとえ遠隔でも赤ちゃんの鼓動を“感じられる”ことが、どれほど救いになるか。実際、赤ちゃんの鼓動を体感したお母さんは、その後の育児放棄や虐待のリスクが下がるという話も聞きました。触覚が持つ力の大きさを思い知らされる瞬間でした。

育児をしていると、スキンシップがどれほど強いコミュニケーションか、日々の中で痛感します。泣き止まない子供に100の言葉を尽くすより、そっと抱きしめたほうが落ち着く――そんな経験を多くの親が持っているでしょう。大人になると忘れがちですが、スキンシップは私たちにとって最も贅沢なコミュニケーションなのだと思います。年齢を重ねても、触れられることで心が癒されるのは本能なのでしょう。

電話で声が届き、ビデオ通話で表情が届くようになりました。そしてもし、触覚さえも遠隔で届けられるようになったなら――孤独という社会の大きな課題に、ひとつの光が差すのかもしれません。

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鈴木光平
執筆者
鈴木光平

10年にわたって、フリーライターとして活動。テックビズのライターとしても活動中。主にスタートアップ界隈を中心に起業家や投資家などを取材、記事の執筆などを行ってきました。貴重な話を聞いてきた経験から、少しでも役に立つ情報をお届けします。

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