一問一答!海外の最先端事例に学ぶ2025年先取りキーワード用語解説集

海外の人事・HR領域の最先端事例では、様々なキーワードが出てきます。2025年を先取る形で重要キーワードを紹介します。

HUMAN CAPITAL +

編集部

「HUMAN CAPITAL +」の編集部です。社会変化を見据えた経営・人材戦略へのヒントから、明日から実践できる人事向けノウハウまで、<これからの人的資本>の活用により、企業を成長に導く情報をお届けします。

人的資本経営

人材を「資本」として捉え、その価値を最大限に引き出すことで、中長期的な企業価値の向上につなげる経営手法。外部環境の変化に対応し企業価値を高めるためには、人材を「コスト」や「資源」ではなく「投資対象の資本」として捉え、人材の価値を引き出す経営スタイルが求められる。

ジョブ型雇用

企業と個人が合意した職務内容(ジョブ)に基づいて雇用する雇用形態。職務内容や責任を明確に定義し、その職務に応じたスキルや成果を評価する点が特徴。ジョブ型雇用では、職務記述書(ジョブディスクリプション)に職務内容を明記し、その職務に必要なスキルや経験、資格を備えた人材を採用する。職務や等級によって賃金が決まるため、業務内容を変更する場合は再契約や給与体系の見直しが必要になる。

三位一体の労働市場改革

「経済財政運営と改革の基本方針2023(骨太方針2023)」において示された、(1)リ・スキリングによる能力向上支援、(2)個々の企業の実態に応じたジョブ型人事(職務給)の導入、(3)成長分野への労働移動の円滑化の3つを柱とする政府の新しい改革の方向性。

ジョブ型人事指針

ジョブ型人事制度を導入した各企業の事例をもとに、2024年8月28日に政府が公表した指針。この指針では、すでにジョブ型人事制度を導入している20社の事例が紹介されている。

スキルマップ・ラーニングマップ

スキルマップは、従業員のスキルとそのレベルを記載した一覧表。従業員一人ひとりのスキルと習熟レベルが具体的に把握できるため「仕事を遂行する上で必要なスキルがあるか」「適性があるか」などを可視化できる。

ラーニングマップは、学習や教育を目的とした一覧表。

人材ポートフォリオ

企業が人材に関する情報をまとめ、分析・可視化した人事マネジメント手法。社内の人的資本の構成内容を把握することで、適材適所の人材配置や人材育成、採用計画など、人材マネジメントを戦略的に行うことができる。

マイクロクレデンシャル

学習内容を細分化して個別に認証する、高等教育における履修証明。従来の学位や職業資格の代わりにはならないものの、スキルアップやリスキリングの手段として活用できる。

スキルバッジ・オープンバッジ

スキルバッジは特定のスキルや知識を証明するデジタル認証情報です。資格や学習履歴を電子的に証明するデジタルバッジの一種で、国際標準規格に準拠したものはオープンバッジと呼ばれる。

オープンバッジは世界共通の技術標準規格に沿って発行されるスキルバッジの一種。物ではなく、データとして授与され、自分専用の「オープンバッジウォレット」で一元管理される。授与されたオープンバッジは、SNSなどでの共有ができるほか、資格に対するオープンバッジであれば、その内容証明としても使用される。

オープンバッジ大賞

オープンバッジの発行・活用に先進的に取り組んでいる団体を表彰し普及を推進することを目的に2023年から開始し、2024年で2回目の開催となる賞。

The War of the Skills Cloud

アメリカの人事・HR業界では、従来の学歴や職歴よりも、具体的なスキルや能力を重視する「スキルベースの採用」への関心が高まっている。この動向は、企業が求めるスキルセットと人材のスキルをマッチングさせる「スキルクラウド」技術の競争として注目されている。企業が人材のスキルを正確に把握・管理し、適切な配置や育成を行うための技術やプラットフォームを巡る競争を指す。具体的には、以下のような企業やプラットフォームがこの領域で競争を繰り広げている。
・Workday Skills Cloud: 従業員のスキルと才能を効果的に管理し、組織全体で戦略的な人材プランニングを実現するソリューションを提供している
・Oracle: 2021年にスキルクラウド市場に参入し、独自のスキル管理ソリューションを展開している
・DegreedやEdCast: 学習体験プラットフォーム(LXP)として、スキルの推論や管理機能を強化している

スキルベースの採用の背景と意義

近年、急速な技術革新や業務内容の変化に伴い、企業は従業員の具体的なスキルセットを重視する傾向が強まっています。これにより、以下のようなメリットが期待されている:
・多様な人材の採用: 学歴や職歴にとらわれず、実際の能力に基づく採用が可能となり、多様性の向上につながる
・人材の最適配置: 従業員のスキルを正確に把握することで、適切な業務への配置やキャリア開発が促進される
・組織の競争力強化: 必要なスキルを持つ人材を迅速に特定・育成することで、組織全体の競争力が向上する

現在の状況と展望

「The War of the Skills Cloud」は、企業の人材管理戦略において重要なテーマとなっており、各社が独自のソリューションを開発・提供している。今後も、スキル管理技術の進化や新たなプラットフォームの登場により、企業の人材戦略はさらに高度化・多様化していくと考えられる。

スキル・ケイパビリティ

スキル (Skills)
・定義:特定のタスクや職務を遂行するための「具体的な能力」や「技術」。習得可能であり、学習や経験を通じて向上できる
・例:プログラミング、データ分析、外国語スキル
・評価方法:スキルテストや実務における成果(例:コーディングスキルテスト、営業成績)
・短期的評価:即戦力としての有用性が高く、具体的な成果を通じて評価されやすい

ケイパビリティ (Capabilities)
・定義:複雑な環境や新しい状況に適応するための「包括的な能力」や「ポテンシャル」。問題解決力や応用力、リーダーシップなどが含まれる
・例:チームビルディング、批判的思考、イノベーション能力
・評価方法:観察と行動の分析による実際の行動や判断力、状況への対応力を評価(例: ケーススタディ、行動観察)
・長期的視点:将来的な可能性や成長のポテンシャルを重視した評価

結論
・スキルは即戦力としての人材価値を示し、短期的な成果を重視する評価に向いている
・ケイパビリティは将来の成長やリーダーシップを見込むための指標で、長期的な視点での評価に適している
・両者をバランスよく評価することで、組織は短期的な成功と長期的な持続可能性の両方を実現できる

CSRD(Corporate Sustainability Reporting Directive)

EUのサステナビリティ開示規制であり、2023年1月5日に発効された。これにより、EU加盟国は2024年7月6日までに定められた目標を達成するための国内法制化の措置をとる必要がある。目的は、EUにおけるサステナビリティ報告の一貫性を高め、金融機関、投資家、広く一般の人々が比較可能で信頼できるサステナビリティ情報を利用できるようにすること。

ISO 30414・ISO 30201

ISO 30414は、内部及び外部のステークホルダーに対する人的資本に関する報告のための指針であり、労働力の持続可能性をサポートするため、組織に対する人的資本の貢献を考察し、透明性を高めることを目的として発表された。事業のタイプ、規模、性質、複雑さにかかわらず、全ての組織に適用可能なガイドラインとしている。

ISO 30201は人材マネジメントシステムを定義する規格で、品質のISO 9001や環境のISO 14001の人材版と言えるもの。また、あくまでガイドラインであるISO 30414と異なり要求事項となるため、ISO 9001やISO 14001のような公的な認証制度に発展する可能性がある。

国際サステナビリティ基準委員会(ISSB)

サステナビリティ情報を開示するための国際的な基準を作成する機関。 IFRS(国際会計基準)の設定に関わるIFRS財団の下に2021年11月に設立された。

Alternative workforce(代替的労働力)

契約社員、 フリーランス、ギグ・ワーカーなど、つまりフルタイム従業員を補助する手段とみなされてきた労働力。しかし深刻な人手不足なども相まって、これらは労働力の主流の1つになっており、戦略的に使いこなしていく必要があるものとして注目されている。

メンバーシップ型雇用

社員を広く総合職として一括採用し、業務内容や勤務地を限定せずに雇用契約を結ぶ仕組み。 終身雇用を前提としており、企業の社風に適した人材を長期にわたって育成する。 年功序列によって昇進が決められることや、企業別に労働組合を保有していることも大きな特徴。

ピープルマネジメント力

従業員一人ひとりと向き合い、その成長や可能性を引き出すことで、組織の成果を最大化させるマネジメント手法やその能力。従業員のモチベーションやキャリア観、エンゲージメントなどを高め、個人の成功を促すことで、組織としての成果向上を図る。

テクニカルスキル・ヒューマンスキル

テクニカルスキルは特定の専門分野で必要な知識や能力、操作技術、実務的なスキルを指す。特定の職業や仕事に関連する実際の業務を遂行するために必要なスキルであり、業界や職種によって異なる。職業訓練、教育、経験を通じて磨かれ、職務遂行に貢献する。

ヒューマンスキルは主に人間関係やコミュニケーション能力、協調性など、職場で良好な関係を築き、効果的・効率的に働くために必要なスキルを指す。テクニカルスキルとともに、個人や組織の成功に重要な役割を果たす。

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HUMAN CAPITAL + 編集部

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