【11/20開催イベントQ&A】フリーランス新法における重要ポイントを振り返る

【11/20開催イベントQ&A】フリーランス新法における重要ポイントを振り返る

昨今、フリーランス人材の活用が進む中で、契約締結や実務運用において多くの課題が浮き彫りになっています。先日のセミナーでは、フリーランス活用における法的リスクや実務上の注意点について多角的な議論が展開されました。 本記事では、2024年11月20日(水)に開催されたセミナー「フリーランス新法で変わる!人材戦略の勝ち筋とリスクを弁護士と人事責任者が紐解く」での主なQ&Aを要約しつつ、フリーランス活用のポイントを整理します。

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編集部

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Q. フリーランスの方から知的財産権を取得する契約を締結する場合、受託者が発生させた知的財産権を委託者側が取得する旨に加えて、かかる取得の対価は業務委託の報酬に含まれる旨を記載すれば問題ないでしょうか?

A. 業務委託報酬に知的財産権の取得対価が含まれる旨を明記すれば対応可能です。ただし、知的財産権譲渡の範囲を具体的に明示することが重要です。(法律事務所ZeLo 藤田)

Q. フリーランスとの契約で最も注意すべき点は?

A. 一つ目は、成果物や委託する業務の内容を明確にし、契約書に記載することです。求める成果物や委託する業務が曖昧な契約では、これらに対する認識の違いがトラブルにつながる可能性があります。二つ目は、フリーランスと従業員の区別を明確にすることです。業務遂行のプロセスを把握し、業務委託契約に基づくフリーランスと雇用契約に基づく従業員の違いを明確に認識した上で運用に落とし込み、偽装フリーランスとされるリスクを回避する必要があります。(法律事務所ZeLo 藤田)

Q. フリーランス側から解除理由の開示請求もできるというお話でしたが、「この理由には納得できません。」といった形で契約解除を拒否することはできますか?また、フリーランスと揉めた場合も想定して、企業側としてどういったリスクを想定しておけばいいですか?

A. 基本的には解除の適法性は契約書に書かれている解除事由に該当するかどうかが判断基準となります。例えば、破産手続の開始や差押えといった客観的な事由があり、かつそれが解除事由になっているのであれば、フリーランス側が納得していなくとも、契約書の内容に従って有効に解除できます。一方で、契約書に解除事由が明記されていない解除事由を主張する場合や、契約がまだ有効である期間中に一方的に解約を申し出た場合には、その行為が法的に適切かどうかが問われ、無効となるケースもあります。

対策としては、フリーランスと契約を締結する段階で、どのような場合に解除する必要があるかを想定して契約書を適切に作成し、そのような事情が生じたときに有効に解除できるようにしておくことでリスクを軽減することが可能です。

フリーランス法の施行により、解除の30日前予告や理由開示請求など、フリーランス側の権利が強化されました。従来は表面化していなかった委託者側からの違法な解除について、今後は、トラブルとして顕在化する可能性が高まっています。そのため、契約段階で成果物や業務内容を明確にすること、また、契約書上、解除事由を明確にし、適切に予告期間を設けることで、紛争リスクを低くすることが可能です。(法律事務所ZeLo 藤田)

Q. 「契約解除する場合は30日前」という部分について、契約書にはどういった記載をすれば良いですか?任期満了で終了の場合も30日前通知は必要ですか?

A. 2月に予告期間が足らなくなることを考慮すると、契約書内に「一カ月前」と記載するのではなく、「30日前」と書いたほうが簡明ですし、現場の方も間違いなく済むので、そのような記載が適切かと思います。

また、契約期間満了で終了させて更新しないという場合にも、30日前に予告の通知をする必要があります。(法律事務所ZeLo 藤田)

Q. 人材稼働実績の状況に応じて、当初の期間より契約満期を早めることは可能でしょうか?

A. 「パフォーマンスが低い」や「期待値に達しない」といった理由で契約期間中に業務委託契約を終了させたい場合、これが契約の解除事由に該当するのかを検討する必要があります。

契約解除に関しては、「債務不履行解除」という考え方があります。具体的には、委託した業務を遂行していただけているとは言えない場合、与えられた「債務」を履行できていないので、契約を解除できる、といったものです。「パフォーマンスが低い」、「期待値に達しない」から契約を解除したいという場合、債務不履行に基づく契約解除(民法541条および542条)が可能かどうか検討することになると考えます。この場合、重要なポイントとして、パフォーマンス不足や期待値に達していないことをフリーランス側が否定する可能性があります。例えば、「私は十分な仕事をしている」と主張された場合、水掛け論になってしまうようでは、「債務不履行」であると委託者側が示せているとはいえません。第三者が見ても債務不履行であるかどうか判断できる状態にしておく必要があります。そのためには、何を基準にできている/できていないの判定をすべきか明確になるように契約時点で委託する仕事の内容だけでなく具体的な仕様や求められる業務レベルを明確にし、テキストに落とし込んでおくことが不可欠です。(法律事務所ZeLo 藤田)

Q. IT業界でフリーランスを活用する際の注意点は?

A. IT業界に限らないですが、以下の2点が特に重要です。

  1. 契約時に成果物や委託業務の内容を具体的に明示する
  2. 偽装フリーランスならないように業務の委託の方法に留意する

特に①について補足します。業務委託をした際に求められるフリーランス法で定められている事項を明示すること(実務上3条通知と呼びます)は法令上の要請として遵守する必要がありますが、中でも、成果物があるときはその「給付の内容」、役務(サービス)提供を委託するときは、委託する業務の内容を可能な限り具体的に定めることが重要です。フリーランスに関するトラブルの原因として多いのは、あらかじめ契約上求められている事項についての認識の不一致やあいまいさに起因するものであるので、上記は特に意識したいポイントです。(法律事務所ZeLo 藤田)

Q. フリーランス1名を活用する場合は業務委託(準委任)になるかと思います。その場合は「偽装請負の可能性」を指摘される可能性がありますが、対応する法的な解釈を教えてください。

A. ①一般に、派遣法上の許可がないにもかかわらず、労働者派遣と同等の状態を実現していることを「偽装請負」、②直接契約するフリーランスに対して従業員と同等の働かせ方をしていることを「偽装フリーランス」と呼ぶことが多いです。

①についても、②についても、微妙なケースも多く判断が難しい事例が多いですが、主には、ア 仕事依頼や業務の指示等の諾否の自由の有無。イ 業務の内容や遂行方法等の指揮監督の有無。ウ 時間的場所的拘束の有無。エ 報酬の算定方法・労働対償性(例:報酬の対象は仕事の成果か、時間給等で定められているか)。オ 他者による労務提供の代替可能性。などを考慮要素として判断していくことになります。

なお、近時、厚生労働省から労働者性についての参考資料集が公表されましたので、詳細な検討をする場合に活用することが考えられます。(法律事務所ZeLo 藤田)

労働基準法における労働者性判断に係る 参考資料集:https://www.mhlw.go.jp/content/001319389.pdf

Q. 寝坊などフリーランスの勤怠不良があった場合、即日解約は可能ですか?

A. 原則として、即日解約は困難であると考えます。
原則として、解除をするには「少なくとも三十日前までに、その予告をしなければならない」(フリーランス法16条1項)とされていますが、やむを得ない事由により予告することが困難に場合等には、この予告をしなくてよいとされています。

「やむを得ない事由」には、フリーランスに責めに帰すべき事由がある場合を含むとされていますが、例えば一度寝坊をして遅刻をしたというのみでは、その寝坊によって業務の重要部分を行えなくなった、という場合であれば別ですが、基本的には即日解除を基礎づけるだけのやむを得ない事由まであると評価される可能性は高くないと考えられます。どの程度の遅刻があればやむを得ない事由に至るのかについては、ケースバイケースの判断にはなるため、実務的な対応としては、理由を伝えつつ、一方的な解除をするのではなく、まずは合意解除を打診することがよいと考えられます。(合意解除の場合は、適切に行えば30日前の予告などは不要)(法律事務所ZeLo 藤田)

Q. 同じ現場になった際、正社員とフリーランスのコミュニケーションの取り方でおすすめの方法があれば教えてください。

A.契約形態に関わらず、エンゲージメントとパフォーマンスは概ね相関するという前提があります。自立・自律的に動いていただく期待値を持ちつつ、担当者とフリーランスの相互理解や、会社に対する理解促進、共通の目標設定については、時間を惜しまずコミュニケーションすることが望ましいでしょう。(テックビズ 藤村)

Q. フリーランスのコンサルタントは中小零細のブティック型コンサルの競合になり得ますか?

A. 競合と協業の両面が想定されます。ブティックコンサル、フリーランスともに案件を獲得・継続していくことが鍵になりますが、両者の課題を比較すると、コンサル側はリソース不足、フリーランス側は案件不足が見られ、これを補完する協業関係が一般的になると考えられます。ただし、フリーランスの中には組織化を進めて中小企業化する未来も想定されるため、市場全体でいうと競合の色合いも孕んでいると言えるでしょう。(テックビズ 藤村)

Q. 採用難の企業・ポジションにどのように伴走していますか?

A.基本的には該当ポジションの母集団形成〜クロージングまで裁量を持たせる形で依頼いただく機会が多いです。その中で、企業文化およびポジションの理解を深めつつ週または隔週で進捗をすり合わせのうえ、自走いただくイメージで、受け入れ企業とフリーランス間で如何に相互理解がなされるかが鍵となります。(テックビズ 藤村)

まとめ

フリーランスの活用が広がる中で、法的な留意点や契約時の具体的な取り決めがますます重要になっています。企業がフリーランスと円滑な協業を進めるためには、法令遵守を前提に、相互の信頼関係を構築する姿勢が求められます。

今回のフリーランス保護新法施行への対応をはじめ、フリーランスとして働く方やフリーランスと取引を行う企業のご担当者でお困りごとや相談事項があれば、株式会社テックビズまたは法律事務所ZeLoまでお気軽にお問い合わせください。

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テックビズについて

「働き方を変え、世界を変えていく」をスローガンに掲げ、国内最大級のITフリーランス向けエージェント「テックビズフリーランス」をはじめとした、個人と企業のマッチングサービスを提供。専任コンサルタントによる、テクニカルスキルとヒューマンスキルの双方からの高品質なマッチングによって、継続稼働率は約97%を実現。創業以来、「人生を豊かにする新たな働き方の創造」というパーパスのもと、人生を豊かにする新たな働き方の創造を目指す。

法律事務所ZeLoについて

2017年3月に設立された企業法務専門の法律事務所。スタートアップから中小・上場企業まで、企業法務の幅広い領域でリーガルサービスを提供している。AI契約審査プラットフォームを開発する株式会社LegalOn Technologiesと共に創業し、リーガルテックやITツールを積極的に業務に取り入れている。グループファームであるZeLo FAS株式会社と税理士法人ZeLoと連携する。

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HUMAN CAPITAL + 編集部

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