社内コミュニケーションの成功事例~人事歴20年のプロが語る、社員のやる気が劇的に変わった施策とは?~

社内コミュニケーションの成功事例

本記事では、社内コミュニケーションの成功事例や具体的な活性化方法とその導入のコツを、複数の業界で実践し成果を出した人事歴20年のプロフェッショナルがご紹介します。

本連載「実践から学ぶ、人事のヒント」では、第一線で活躍する人事のリアルな経験と実践知をもとに、採用・育成・定着の現場で直面する課題とその解決のヒントをお届けします。

社内コミュニケーション

「なぜ、あのチームは雰囲気が良く、成果も出るのか?」
人事として20年以上、数千人の社員やマネージャーと向き合ってきたプロは、ある共通点に気づきました。

それは、“社内コミュニケーションの質が成果を左右する”ということです。
制度や報酬を整えても、従業員同士の関係性がぎくしゃくしていると、メンバーのやる気は上がりません。一方で、信頼できる上司がいて、気軽に意見を言い合える職場では、社員が自ら動き出します。

この記事では、人事のプロが実際に社内コミュニケーション施策を導入して、メンバーのモチベーションを活性化させた成功事例をもとに、人事部・現場マネージャーがすぐ実践できる「導入のコツ」をご紹介します。

社内コミュニケーションの成功を阻む要因とは?

形だけのコミュニケーションが生む“静かな分断”

多くの企業で「朝礼」「週報」「定例会議」など、形式的な社内コミュニケーションは存在します。
しかし実際には、「報告して終わり」「意見を言ってもスルーされる」と感じている社員が少なくありません。

あるIT企業では、表面上は会話が多いのに、実際は“報連相止まり”で、会議では部下がほとんど発言せず、指示待ちが続いていました。

原因は、上司が「指摘中心」になっていたことです。結果、従業員は「どうせ意見を言っても聞いてもらえない」と心を閉ざしていたのです。
このような“静かな分断”は、チームの成長を止める大きな要因になります。


やる気を失う従業員のサインとは

社内での雑談が減る、Slackのリアクションが少なくなる、会議で笑顔が消える。
これらはすべて、従業員のエンゲージメントが下がっているサインです。

人事調査の中でも、「同僚との会話が減った」「上司に話しかけづらい」と答える社員が増えたタイミングで、離職率が上昇するケースが多く見られます。
つまり、社内コミュニケーションの活性化は、採用や評価制度と同様に“離職防止”につながる要素と言えます。


人事として気づいた、“制度よりも空気”が人を動かすという事実

評価制度やキャリアパス設計も大切ですが、それ以上に社員のモチベーションを左右するのは「社内の空気」です。「上司が気軽に雑談してくれる」「感謝の言葉が多い」といった小さな日常が、従業員の意識を大きく変えます。

ある小売業界の企業では、制度改革より先に「感謝を言葉にする文化」を導入。この企業では、10年前に”Thank youカード”を導入し、メールでカードを送りあい、上司・部下間でお互いに称賛しあう文化を推奨しました。

その結果、それだけで雰囲気が一変し、メンバーの会話量がグンと増えました。
やる気を高めるのは、制度ではなく“人と人との信頼関係”なのです。


社員が変わった!社内コミュニケーション成功事例3選

① 上司に相談したくなる「オープンドアタイム」の導入

多くの企業で生産性が求められる中、自席でちょっとした雑談をしていると周りからよく思われないのではないかと息苦しさを感じる従業員が多いのではないでしょうか。

ある医療機器メーカーの課題は、「メンバーが発言しない」ことでした。
背景としては、上司と部下の1on1ミーティングは基本的に、指示や共有事項を部下が聞く場となってしまっていたことが挙げられます。それ以外の時間に雑談やちょっとした相談をしたくても、上司のスケジュールが埋まっていて時間が取れず、遠慮してしまう社員が多い状態でした。

そこで、現場のマネージャーにお願いしたのは週1回30分の「オープンドアタイム」でした。上司がカレンダーに”オープンドア枠”を作り、誰でも自由に雑談・相談できる時間枠を上司がカレンダーに設定したところ、徐々に社員からの相談が増え、本音を話すようになりました。

3か月後には、ミーティング時間が短縮し、従業員の自発的な提案も増加しました。
このように、“話すより聴く”リーダーシップが社内コミュニケーション活性化のカギです。


② 朝礼・週次ミーティングでの「賞賛共有」

続いては、「賞賛共有」の仕組みを導入した製造業の事例です。
毎週の朝礼で、メンバー同士が「今週よかったと思う人」を1人挙げ、どんな点が良かったのかを伝えるというシンプルな取り組みです。

コロナ禍以降ハイブリッド勤務となり、オンラインで朝礼を実施することになりました。対面で全メンバーと接する機会も減ったので、人事部の毎週金曜の朝礼で、成果や感謝、労いの言葉を伝え合うことを行うことで、部全体のモチベーションも上がったと感じています。
たとえば「Aさんが新人フォローをしてくれて助かった」「Bさんの工夫で作業効率が上がった」など、日々の小さな貢献を可視化しました。

3ヶ月後のアンケート調査では「職場の雰囲気が良くなった」との回答が増え、人は“成果”だけでなく、“努力や姿勢”を認められることで動機づけられるという示唆が得られました。


Slackやチャットの“サークル的雑談チャンネル”の活用

別のIT企業では、Slack等の社内チャットツールに「サークルチャンネル」を導入しました。

「会社近くのおすすめランチ」「猫好き集まれ」「子育ての悩み」など、従業員が自由にサークルチャンネルを立ち上げ、みるみるうちに100近くのチャンネルが誕生し、従業員が興味のあるチャンネルに組織を超えてフラットに集う場所に。業務外のつながりができたことで、従業員同士の心理的距離が縮まり、チーム内の相談件数が倍増しました。

当初は「雑談なんて時間のムダでは?」という声もありましたが、むしろ生産性が上がる結果に。メンバー同士が話しやすくなったことで、問題の早期発見やアイデア提案が増えたのです。

例えば、コミュニケーションが気軽にでき、活発になったことで、ちょっとした困っていることや課題を周囲に相談しやすくなり、スムースに業務が進捗するようになったことなどです。

業務外のつながりを感じられると社内の空気が変わります。


社内コミュニケーション活性化を成功に導く導入のコツ

社内コミュニケーションの目的を明確化し、形だけの導入にしない

ツールや制度を導入しても、目的が曖昧では社内に浸透しません。

「何のために社内コミュニケーションを強化するのか?」を人事部や経営層で最初に明確にすることが重要です。例えば、「従業員の定着を高めたい」「部署間を超えたつながりを強めたい」など目的を言語化するだけで、施策の方向性が一貫し、社内全体の理解が深まります。

次に、それを現場のマネージャーに理解してもらい、現場社員に浸透させられるかがポイントです。現場社員同士や、部下と上司のコミュニケーションや賞賛しあう文化が結果的に社員の定着率やモチベーション向上につながると言えます。


管理職が“聴くリーダー”へ変わることが鍵

コミュニケーションの質は、上司の傾聴する姿勢で決まります。
人事の視点から見ても、管理職が“評価者”から“支援者”に変わった瞬間、社員の表情が明るくなり、チームが動き出すケースは多いです。「どう思う?」と一言添えるだけで、従業員は主体的に発言します。

管理職自身が“聴く姿勢”を示すことが、最も強力な社内活性化のスイッチなのです。
社内の管理職や新任管理職向けのマネジメント研修の中で、傾聴する姿勢を含めたコミュニケーションスキルアップ講座を実施することも効果的です。


継続・習慣化の仕組みづくりが活性化の決め手

どんな良い施策も、一度きりでは定着しません。
社内コミュニケーション活性化を継続するには、「仕組み化」が欠かせません。

たとえば、

  • 月1回の「振り返り&感謝共有会」
  • 半年ごとの「1on1実施率レビュー」
  • 社員アンケートによる効果測定

こうした仕組みを人事と現場が協力して回すことで、導入した施策が“文化”に変わります。
活性化とは、継続的に改善し続ける姿勢のことなのです。


まとめ|社内コミュニケーションを成功させるために

社内コミュニケーションの改善は、特別な制度を導入することではありません。
社員一人ひとりが安心して意見を言える環境を、上司が意識的に作ることから始まります。

「聴く」「褒める」「感謝を伝える」――この3つの小さな行動を積み重ねることで、
従業員のやる気が自然と活性化し、社内全体の空気が変わっていきます。

前述のコミュニケーション活性化の施策を通して、心理的安全性が育まれ働きやすい職場環境になったことや、周囲に相談しやすくなったことにより、一人で悩む時間が減り、協力しあって早期に問題(課題)が解決するようになったとの社員の声も複数ありました。

今日からできる第一歩として、ぜひあなたのチームでも“対話の時間”を設けてみてください。

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執筆者
HUMAN CAPITAL + 編集部

「HUMAN CAPITAL +」の編集部です。 社会変化を見据えた経営・人材戦略へのヒントから、明日から実践できる人事向けノウハウまで、<これからの人的資本>の活用により、企業を成長に導く情報をお届けします。

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