「SESの引き抜き」は、インターネットやYouTubeのトピックでも取り上げられるほど、多くの法人企業が懸念するトラブルです。
本記事では、テックビズで法人統括責任者として働く辻内繁佳さんに「SESの引き抜き」のリアルについてインタビュー。社内でのさまざまな経験に加え、多くの法人企業の状況を見てきた“TECHBIZのプロ”が、発生原因や対応について話しています。SESの引き抜きトラブルが発生した際のヒントになるかもしれないので、ぜひ最後まで目通してみてください。
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テックビズで働く辻内さんは、法人開拓業務・コンサルタント業務・コーポレートITの統括責任者など社内のさまざまな領域を経験してきた、いわば“TECHBIZのプロ”です。現在は、テックビズの法人統括責任者として、日々の業務につとめています。
実は創業期からのメンバーの一人でもあり、これまで多くの法人企業の状況を見てきた辻内さんに、「SESの引き抜き」のリアルについて話を聞きました。
SESの引き抜きが発生する原因は何?どう対応すればいい?

ーーSESの引き抜きについて質問させてください。インターネットやYouTubeを検索したとき、SESで働くエンジニアの引き抜きに関するトピックをしばしば目にします。こうした事態が発生する原因は何なのでしょう?
辻内さん:SESのみならずですが、エンジニアの引き抜き……という点で言えば、TECHBIZでも“やられる側”でトラブルになったことがあります。法務部にいた私が当時、実際に対応したこともありました。
そのことを踏まえたうえで、SESの引き抜きが発生する原因はいくつかあると感じています。
一つ目に考えられるのは、業界の商流構造です。昔と比べると薄れていってはいるものの……現在も存在する“多重請負構造”が、SESでの引き抜きを招く原因でもあると考えています。
たとえばですが、商流上に介在する法人企業であれば、二次請け・三次請け・四次請け……といった各社が営業としてのマージンを取りますよね。
その仕組みにおいて、法人側としては「人材を安く使いたい」、人材側としては「マージンを取られずに報酬がほしい」という思いが変に噛み合わさり、SESでの引き抜きのような事態が起きてしまう実情があります。
原因の二つ目として考えられるのが、マッチング以降の、間にいる企業(エージェント)の価値が薄れてしまうことです。
マッチングするまでは「法人企業同士の付き合いがあって、フリーランスに案件が下りてきて、双方がマッチする」と、介在する意味が明確なのですが……マッチング以降は、案件を持つ会社とフリーランスがタッグを組んで業務を遂行していくかたちが基本です。
こうした状況から、業界として「商流間にある企業の価値はどうなのか」という課題もあると思っています。
三つ目には、SESは免許がいらないという事実も原因の一つにあるのかなと。極端な話になりますが、案件情報と人材がいれば、SES事業を行うことは可能です。
派遣会社を始めるよりもハードルが低いことにくわえて、中には「ただ間に入ってエンジニアと案件をマッチングするだけ」のようなSESもいたりします。そしてどんな場合でも、稼働する人がいなければ売上げは立たないので、重宝されるのはやはり“人材”です。
健全にエンジニアを探すSESが殆どではありますが……。お伝えしたような背景で事業を行い、エンジニアの引き抜きをしてトラブルを起こすSESもいるのも現実です。
ーー率直に、かなりの驚きがあります。商流構造をはじめ、どれも解決が難しい発生原因のような気がするのですが……対応する手立てはあるのでしょうか?TECHBIZで実際に行っている試みなどあれば、あわせて教えていただきたいです。
辻内さん:一つ目の原因に関しては、商流が浅ければ、引き抜きのリスクは減ってくる印象があります。
TECHBIZの場合でいうと、現在は四次請けまでに商流制限をしつつ、エンド元請け企業の開拓をしているのですが……商流が浅くなることでトラブルは減少する傾向にあると感じています。昔より稼働中人材も増えていますが、比例して引き抜きのトラブルが増えているというわけでもないので。
また、「quick AGENT(クイックエージェント)」というプラットフォームでは、“人材を探している法人企業”と“人材を抱えているエージェント”が直接マッチングできるようになっており、多重請負構造の解消にもつながると考えています。
二つ目に関しては、介在価値を感じてもらえるような環境整備をしっかり行うことです。
こちらにおいてはTECHBIZだと、フリーランスを直接抱えており、人材に寄り添うかたちで悩みや課題を解決できるような環境を整備しています。このことから、マッチング以降もしっかりと介在価値を感じてもらえて、高い継続率にもつながっているのかなと感じています。
三つ目の原因に関しては、徐々に淘汰されていくのかなと思います。
たとえば現在でいうと、“業務委託可”と打ち出して募集をしている法人企業の採用サイトもすでにあります。それにならって今後、案件の情報をオープンにする会社が多くなるにつれて、案件に直接タッチするエンジニアの方も増えていくかと。
そうなったとき、「ただ間に入るだけ」のようなSESや引き抜きを利用する必要がない世界観になるのかなと考えています。
SESの引き抜きを完全になくすことは不可能なのか?プロが見た業界のリアル
ーーここまでお話を聞いて、ふと思ったのですが……SESの引き抜きはどうしても発生してしまうものなのでしょうか?対処療法的な手段ではなく、SESの引き抜きを業界的に完全になくしたり、事前にしっかり発生を防いだりする方法はないのか気になりました。
辻内さん:発生はしてしまうと思います。というのも、個人の権利的な面だけ見ていえば、“どこの会社と取引するか”というのを妨げることはできないからです。
ただ、各社から知り得た情報を悪用する……つまるところ今回でいえば「商流を飛ばす」行為や、他社が抱えるエンジニアの引き抜きをするというのは、きちんとした契約書を交わしていれば、あきらかな契約違反になります。
そのため、事前にしっかりと契約をすることはもちろん、エンジニアや各社に対して啓蒙や注意をしていくしか方法はないのかなと思います。
ーーなるほど、業界のリアルが伝わるご意見だと思いました。少し古風な言い方をするのであれば……SESの引き抜きのような、エージェントに「スジを通さないやり方」をしてしまうと大きなトラブルにつながってしまうのですね。
辻内さん:そうですね。たとえば、「フリーランスが独自のツテで仕事をもらう」や「独自で探してきた別会社に転職する」などであれば、とくだんNGではないです。
問題なのは、エージェントから知り得た情報(案件やエンジニアなど)を私的利用してしまうケースですよね。もしも万が一、商流を飛ばしたい理由などが何かあるのであれば、きちんとエージェントに相談をしていただきたいと思います。
TECHBIZの場合になりますが、その理由にもとづいて転職の支援もできます。状況が難しいようであれば、会社間での対話をふくめ、対応をすることも可能です。
情報を私的利用し、秘密裏に進めるのは悪意しかないように見えてしまうので、くれぐれもやめていただきたいですね。
・SESの引き抜きは、業界の商流構造など、解決が難しい原因から発生している。
・対処療法的な手段はあるものの、SESの引き抜きの発生を完全になくすのは困難。契約や啓蒙をきちんと行うのが大切。
・トラブルを防ぐために、TECHBIZでは商流制限や環境整備をしている。相談があれば、転職の支援や、会社間での対話なども行っている。
SESの引き抜きが発生するのは、現代のITエンジニア不足も一因にある?

SESの引き抜きが起こる背景には、IT人材不足の現代において、エンジニアなどのDXを推進できる人材を各社が探していることも関係していると考えられます。
その考察に結びつく資料の一つに、経済産業省の「令和6年度中小企業実態調査事業 中小企業・小規模事業者の実態把握に関する調査研究 調査報告書」があります。
こちらによれば、“DXに向けての取組を進めるに当たっての問題点”を法人各社にヒアリングしたところ、いずれの段階でも「DXを推進する人材が足りない」という回答が多く集まっています。

※出典:「令和6年度中小企業実態調査事業 中小企業・小規模事業者の実態把握に関する調査研究 調査報告書」経済産業省
法人各社のデジタル化の取組段階
段階1:紙や口頭による業務が中心で、デジタル化が図られていない状態
段階2:アナログな状況からデジタルツールを利用した業務環境に移行している状態
段階3:デジタル化による業務効率化やデータ分析に取り組んでいる状態
段階4:デジタル化によるビジネスモデルの変革や競争力強化に取り組んでいる状態
とくに注目なのが、段階3と段階4です。どちらの段階も、すでにビジネスにDXを取り入れているにもかかわらず、それを推進できるような人材の不足を感じているということになります。
DXを推進する人材の不足は現代における課題であり、SESにおいても他人事ではありません。事業をするうえで、ITエンジニアの存在は非常に重要です。
言ってしまえば、ITエンジニアの需要と供給のバランスが取れていないことが、“SESの引き抜き”が発生する一因でもあるのかもしれません。
とはいえ、SESの引き抜きは、契約違反にもつながる行為です。エンジニア不足に悩んだなら、大きなトラブルを招くような選択をするのではなく、信頼できる支援パートナーと連携し、すぐに即戦力人材を紹介してもらうことがおすすめです。
TECHBIZでは、最短即日で即戦力エンジニアをご紹介しており、初めてフリーランスを活用する法人企業様からも高い評価をいただいています。
また、高精度マッチングで継続稼働率97%を実現しており、契約支援から導入後のフォローまでを含めたトータルサポートも行っています。
なお、お問い合わせは無料です。もしも現在、エンジニア不足の解決方法を探しているのであれば、この機会に相談だけでもしてみてはいかがでしょうか?
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